VCにできること
性別がVCの出資に及ぼす影響と、起業家の資金面での成功を左右する要因を十分に理解するには、もっと多くの調査が必要だ。だが、VCが出資先の構成の多様性を高めるために、現時点で取れる手段は次の2つである。
(1)「適性の欠如」に関する無意識の偏見を避ける
VC界は、オーケストラから教訓を学べるだろう。オーケストラの世界は、1970年代以前は男性が多くを占めていた。だが、演奏者を見えないようにしたオーディションが導入され始めてからは、予選を通過する女性の数がすぐに50%増えた。
テクノロジー業界における我々の研究によれば、個人を特定できない履歴書や仕事のサンプルは、特定の人種や性別を示唆する名前に対する無意識の偏見を抑制するのに役立つ。新たな方法で「適性」に囚われない視点から見ることで、より多くのVCは女性を雇用し、資金提供できるようになる。したがって、個人を特定できない採用手順の導入を検討すべきだ。
出資先の決定に際しては、あえて異論を唱える人(悪魔の代弁者)を置く、または共同経営者らによる満場一致の票を義務づけることで、みずからの認知バイアスを克服できるようになるだろう。
(2)女性が集いネットワークを築く場所で、女性創業者を積極的に探し求める
米国各地の都市部では、アイデアの共有や起業を望んでいる女性は、志を同じくする女性との会合に集ったり、地元の商工会議所と連携したりしている。こうした既存のネットワークとつながることで、有力な出資候補者が得られるだろう。
VCも女性経営企業も、目指すところは同じだ。市場を拡大し、儲けることである。女性創業者に協力的なVCは、より性別多様性のある投資選択を行うことができ、結果として多大な利益を得ることができるのだ。
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