ケーススタディ(1):外部情報筋と話し、かつ社風を自分の目で観察する
数年前、ブラッド・ノイェンハウスは、ボストンにある大きなティーチング・ホスピタルの支援を受けて独立を予定していたある会社から、入社を誘われた。このスタートアップ企業のCEOである通称ジョーは、ブラッドに最高戦略責任者(CSO)として加わらないかと打診した。
「私はジョーを個人的にも、また仕事上も少しは知っていましたが、緊密に連携して働いた経験はありませんでした。(そこで)彼のチームに加わるのはどんな感じか、本音を知りたいと考えました」と、ブラッドは当時を振り返る。
ブラッドは彼のネットワークの中から、管理職としてジョーと働いた経験がある人たちを特定し、じっくりと話を聞いた。ジョーはCEOとしてどのように目標を設定し、リソースを割り当て、従業員を信頼・管理するのか。「そうした会話の目的は、ジョーと働くのがどんな感じかを探ることでした」とブラッドは説明する。
ブラッドはまた、同社の最高執行責任者(COO)と「内容豊かで戦略的な会話」もした。「事業規模を調整するために、運営面でさまざまな変更が起きていた時期で、まさに変化の時を迎えていたのです。ですから、その状況をCOOがどうとらえているかを判断したかったのです」
最後にブラッドは、従業員の何人かと話したいから、「午後、オフィスに立ち寄って歩き回ってもいいかな」とジョーに尋ねた。「一般社員の率直な意見を聞きたいと思ったのです。どんな仕事を、どんなふうにこなしているか知りたかったのです。どんな人たちか、感触を得たいと考えていました」
この機会に、ブラッドは社風も観察した。「1日の終わりに何が起こるかを見たかったのです。午後5時になったら、みんな一斉に退社するのか、あるいは帰らずにいるのか」
ブラッドはオファーを受け入れるか否かを決定するに当たり、「良い点と悪い点をすべてあげました。カテゴリーごとに、良い点も悪い点もありました」。結局、オファーされた職場の文化が自分に合うとは思えず、またビジネスの将来にも不安を覚えた。「最終的には、このインキュベーター事業が成功する確率を、私がどう評価するかにかかっていました」
ブラッドは、内定を受けないことを決断した。彼によれば、それは正しい決断だったという。ジョーは結局、その後1年も経たないうちに、同社を辞することになったのだ。
現在、ブラッドはマインドエッジ(マサチューセッツ州ウォルサムを本拠地とするコーポレート・ラーニング企業)の最高事業責任者(CBO)を務めている。
ケーススタディ(2):同僚になる可能性のある人たちと一緒に時間を過ごし、直感に従う
3年前、ジェイソン・グッギスバーグは、シカゴにある人材派遣会社のアデコUSAから、リージョナル・バイス・プレジデントのポジションをオファーされた。その職を引き受ける前に、ジェイソンは同社が自分に合っていることを確認したかった。
「企業文化が合うかどうかが、私の最優先事項でした。私がそれまで勤務していた人材派遣会社の多くは、企業文化よりむしろビジネス主導型で、ずっと職場に何かが欠けていると感じていたからです」
ジェイソンはオファーを得た後、上司になる可能性のある人や、業務担当バイス・プレジデント、ナショナル・セールスチームのメンバーなど、同僚になる可能性がある人たちと長時間にわたって話をした。「アデコで働くことがなぜ楽しいか、朝気持ちよく目覚める秘訣は何か、そして、会社になぜそんなに長い期間勤務してきたのかを尋ねました。彼らから話を聞くことで、より包括的な全体像が得られました」
彼はまた、同社の社長と1対1のランチミーティングにも臨んだ。そして、それによって最終的に雇用契約を結んだ。「社長がスタッフのことを大事にし、かつ自分のやっていることに気を配るリーダーであることがわかりました。そのリーダーシップが毎日、何千人もの従業員にやる気を起こさせているのです。私はその日、アデコではトップダウンで企業文化と熱意が重視されていることを確認して、彼女のオフィスを出ました。そして、同社の一員になりたいと思いました」
ジェイソンによれば、仕事を引き受けるかどうかの決定は、合っているかどうかに基づく「直感的決断」だ。「会社について深く知るには、働きがいのある会社ランキングを発表する世界最大級の調査機関グレート・プレイス・トゥ・ワークが発表する資料を見るのもいいし、慈善事業への寄付額を調べてもいいし、あるいは福利厚生を調べることもできる。でも最後は、会社とその社員、特にリーダーと、あなた自身が大切にしている価値観を共有していると感じられるどうかです」
ジェイソンはオファーされた職を引き受け、以来、後悔したことはない。現在、彼はアデコのマンハッタン支店でリージョナル・バイス・プレジデントを務めている。
HBR.ORG原文How to Tell If a Company’s Culture Is Right for You, November 21, 2017.
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レベッカ・ナイト(Rebecca Knight)
ボストンを拠点とするジャーナリストで、ウェズリアン大学講師。ニューヨーク・タイムズ紙やUSAトゥデイ紙、フィナンシャル・タイムズ紙にも記事を寄稿している。