海の下に隠れた「プロセス」が
結果の質に影響する

 組織開発でキーとなる概念は「コンテント」と「プロセス」である。「コンテント」とは何が話され、何が取り組まれているかという仕事の内容的な側面。「プロセス」とは人と人との間で起こっている諸要素で、グループや組織の中の人間的側面のことだ。

 氷山にたとえると、会議などで話されている内容は海面上に見える「コンテント」で、「プロセス」は、その会議の場で実際にお互いの間で起こっていること。たとえば1人ひとりの気持ちのありようや、お互いのコミュニケーションの様子。そうしたお互いの影響関係は、氷山の海の下に隠れた部分のように目を向けられにくいという特徴を持っている。だが、その海の下に隠れた「プロセス」こそが、結果の質に影響するのだ。

 「会議でどのように話されていたか、自由にアイデアを伝えることがなされていたか、1人ひとりが決定に関与できていたか、などの点が、会議で決定されたことの質や満足感、決定されたことが実行されるかどうかに影響してくるのです」

 社会心理学者のスタイナーは、グループでの生産性を予測する概念として、「実際の生産性=潜在的生産性-欠損プロセスに起因するロス」という式を提唱している。

 たとえば3人で綱引きをする場合。個の力の合計は90だが、実際に綱を引いたときは60と計測されたとする。その30のロスが欠損プロセスに起因するロスで、それは引っ張るタイミングのズレ、綱を引く方向や角度の違い、あるいは個別の“手抜き”などにより起こる。

 「日本企業における現代的課題のほとんどは、このプロセス・ロスに当てはまります。組織開発のゴールとは、組織内の当事者が自らプロセスに気づき、そのプロセスを良くしていくことで、組織の効率性を高め、成果や業績を高めてゆくというものなのです」