-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
P&Gを真似てもオープン・イノベーションはうまくいかない
イノベーションの種を社外に求めることのメリットが理解されるようになり、その成功例にあやかって、これを真似する企業が増えている。
そのような成功例として、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の「コネクト・アンド・ディベロップ」(e R&D取引市場やその他の仲介手段を用いて、発明者のアイデアや技術を発見・獲得する仕組み)、インテルの「インテル・キャピタル」(新興のIT企業に投資することで、インテルのビジネス生態系全体を活性化させるイノベーションを促す仕組み)、あるいはノキアが設立したインタラクティブ・フォーラム「コンセプト・ラウンジ」(独立系デザイナーの革新的あるいは先進的な製品コンセプトを見出して獲得する仕組み)などが挙げられよう。
しかし、こうした成功例の一つに飛びついたとすると、それはイノベーションのオープン・ソーシングについて正しく理解していない証拠である。そもそも、そのための唯一最善策など存在しない。新しいアイデア、新しい製品、新しい技術を売買する市場もグローバル化しており、したがってふさわしいアプローチは無数に存在し、その特徴と長所はそれぞれ異なる。
これらイノベーションを取引する市場のことを「イノベーション・バザール」[注]と呼ぶことにしよう。これは、現実世界の伝統的なバザール同様、無秩序で人を途方に暮れされるような取引市場かもしれない。
何しろそこでは、半熟のアイデアや特許から、即戦力になる新製品まで、ありとあらゆるものが雑多に混在しているうえ、アイデア・スカウトやビジネス・インキュベーターなど、さまざまな行商人たちが売り込みに必死である。「この喧騒のなかに飛び込むのか」と思うだけで、おっくうになってしまうかもしれない。
実際、我々が30社を超える大企業の経営幹部にインタビューしたところ、ほとんどの企業がオープン・イノベーションの重要性を理解しているものの、いったいどうすればよいのか、具体的な方法については心もとない企業が多かった。
成功例はたしかに存在する。しかし、P&Gやインテルにとって有効な方法がデュポンやマイクロソフトにも利用できるとは限らないことに、賢い経営者は気づいている。では、自社の役に立つイノベーションを購入するには、どうすればよいのだろうか。
本稿は、イノベーション・バザールでうまく立ち回り、さまざまなベンダーが提供するものを適切に取捨選択するためのガイドとしてまとめたものである。このガイドがあれば、外部市場の状況と社内のケイパビリティに基づいて、さまざまなアイデアをバランスよく組み合わせ、自社のニーズに見合った買い物ができるだろう。くわえて、イノベーション・ソーシングの効果を高める一助となる、新しいタイプの仲介者を一つ紹介する。