組織の構成員の国籍や年齢、性別などが多様であることは、公平性の観点から重要である。ただ、ダイバーシティが生み出すのは公平さだけではない。ボストン コンサルティング グループの調査により、イノベーションを促し、業績に貢献することが判明した。本記事では、その調査結果の概要が示される。


 ダイバーシティは、公平性をめぐる問題であるとともに、イノベーションとパフォーマンスの原動力とも言われる。我々は後者の主張を評価すべく、経営陣のダイバーシティにおける諸側面と、経営陣によるサポートといったダイバーシティの実現条件の重要性、およびイノベーションの成果の関係について、複数の国で大規模調査を実施した。

 8ヵ国(米国、フランス、ドイツ、中国、ブラジル、インド、スイス、オーストリア)における多種多様な業界で、規模の異なる1700社あまりを調査対象とし、管理職の多様性を性別、年齢、出身国、キャリアパス、他の業界で働いた経験、学歴という6要素で測定し、検証した。調査結果の統計分析は、ミュンヘン工科大学と共同で行った。過去3年間に発売された製品が収益に占める割合を、イノベーションの成果を計る代用データとして利用し、変数の相関を個別および包括的に検証した。すると、より新しい製品ポートフォリオを有する企業がイノベーティブと見なされ、当然ながら収益性も高いことがわかった。

 実際のところ、ダイバーシティとイノベーションの成果との間には、すべての調査対象国で、統計的に有意な関係があることが明らかになった。ダイバーシティと業績の厳密なパターンは文化によって異なるが、ダイバーシティの要素が多く見られるほど、その関係はより顕著になった。とりわけ発展途上国では、調査対象企業の70%以上でダイバーシティが注目のテーマとなっていることもわかった。

 なかでも重要な発見は、収益に占める新製品の割合で測った場合、最も多様性の高い企業が、最もイノベーティブでもあるということだった。

 実際に、ダイバーシティを示す6要素(出身国、他の業界で働いた経験、キャリアパス、性別、学歴、年齢)の平均で測定したところ、総合的な多様性が平均以上の企業は、収益に占めるイノベーションの割合が平均19%、税引前利益が平均9%高いことがわかった。他業界での経験、出身国、性別による影響が若干大きかったが、ダイバーシティの6要素すべてで、個別にも全体的にも、イノベーションとの間に統計的に有意な相関が見られた。また、ダイバーシティの各要素の効果は、学歴と年齢、キャリアパスと他業界での経験の間に若干の相関が見られたが、それ以外のほとんどは付随的なものだった。

 この結果から判断するに、多様な要素を重んじるダイバーシティへの包括的なアプローチは、イノベーションの成果という点で非常に有益ということになる。

 公正な雇用慣行(同一賃金など)、参加型のリーダーシップ、経営陣によるダイバーシティ支援、オープンなコミュニケーションの慣行など、ダイバーシティの実現条件を見てみると、これらを導入している企業は40%に満たない。そして当然ながら、こうした慣行を有する企業はダイバーシティのスコアが高く、その結果としてイノベーションの成果も高まる。

 換言すると、ダイバーシティとは明らかに機会損失であり、多くの企業にとって大きな可能性を秘めていることを強く示唆している。これらの実現要素を備えれば、イノベーションの収益に占める割合は、最高で計12.9%となる。