人が空を飛ぶ時代が50年以内に来る!
――未来の“片りん”を現在に見出し、技術開発やビジネス化につなげるような人材に必要な要件や資質は何だとお考えですか。

SF小説を読むような人じゃないですか(笑)。最近、講演で「『ニューロマンサー』を知っていますか?」と聞いたときに、だれも手が上がらなくて、「攻殻機動隊」はと聞くと、それでも数人ぐらいで、少しがっかりしたことがあります。言いたいのは、イマジネーションが大事だということです。未来を語るいろいろなプラクティスは、SFのなかに失敗例も含めて載っているので、SF小説やSF映画、アニメーションに興味を持つのは悪いことではありません。それを実現するには、エンジニアリングの知識も必要ですが、まずはイマジネーション。“妄想力”と言い換えてもいいでしょう
――「ヒューマンウーバー」などは、まさに学生の“妄想力”の産物と言っていいかもしれませんね。
学生から話を聞くときに、「そんなバカなことはできないよ」と押しつぶすようなことはしないように気をつけています。それってよくわからないけれど面白そうとか、わけがわからないけれど価値を追求してみようと思うことが大切です。 真空チューブのなかに列車を通す「ハイパーループ」なんて、完全にSFの世界じゃないですか。対する日本はリニアモーターカーの計画が立ち往生したままあまり進んでいません。ハイパーループやドローンタクシーなど、SF的な発想に基づくチャレンジがいまの日本にはあまり見当たらないような気がします。「おかしい」と言われながらも、個の力で事業を動かしていくような人材を輩出する環境づくりが急務です。
――現在取り組んでいる研究はどのような内容ですか。
3月の「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2018」で、人間に装着するドローンを出展します。これは人間の跳躍能力を拡張しようというコンセプトです。SFではよく人間が空を飛んでいるじゃないですか。個人が空を飛ぶ時代が50年以内に必ず来ると“妄想”しています(笑)。地方に行くと、水と道路、電気が非常に重要なインフラとなっています。高齢者が一人暮らしをしていたとしても、家のそばに道路がないと買い物にも行けないので、道路交通網を整備するのに多額の費用がかかります。しかし、おばあさんがドローンで飛ぶ時代がやって来ると、交通インフラはドローンに置き換わるかもしれません。目的地に自動で運んでくれる、「ドラえもん」のタケコプターの世界です。個人が勝手に空を飛び始めたら、いまとは相当異なる社会になっているでしょう。
(構成/堀田栄治 撮影/宇佐見利明)