エド・ユウに会う

「大変お待たせして申し訳ありません」と、エドは少し取り乱した様子で言った。「ウーバーで手配した運転手がヒースローからの近道を知っていると言い張ったのです。でも、彼の思い違いでした」

 つい、モリーと比較しそうになってしまう。モリーはいつだって、きちんとしていて落ち着いている。だが、アリーヤは先入観を抱かないようにと自分に言い聞かせた。

「いいですよ」とアリーヤは口を開いた。「始めましょうか」

「ぜひとも」と、エドは張り切って応じた。

「この仕事のどんなところに興味を持っているか教えてください」

 エドは次のように説明した。彼のリーダーシップの下でフレッシュフェイスの販売が拡大したことを誇りに思っているのと同時に、新たな挑戦を始める準備もできている。1つの製品に深くのめり込むことを楽しんできたが、複数のプログラムに取り組むことができ、より大きなポートフォリオを率いることができるポジションのほうが、自分のスキルに適していると思う。

 鋭く、明快な答えだと、アリーヤは思った。「ビューティ部門で学んだことのうち、ここクリーニング部門で適用できることは何だと思いますか」と尋ねた。 

 これは重要な質問だった。BBIの経営幹部チームが出した指示では、全部門がより多くのベストプラクティスを共有すること、そして、コラボレーションを強化することが求められていた。アリーヤは実際、他の部門のバイス・プレジデントたちと協働する時間を増やすように、上司からプレッシャーを受けていた。

 ビューティ部門が現地で実施した顧客調査のアプローチがクリーニング部門に役立つ可能性があると、エドは説明した。彼によれば、フレッシュフェイス販売強化に同調査が大いに貢献したという。人類学者とパートナーを組むことは、アリーヤのチームの議題に上っていたが、まだ試行していなかった。

 エドはまた、クリーニング部門の新規定期購買プログラムについて質問し、定期購買ビジネスモデルのトレンドに関する最近の白書に言及した。彼は明らかに入念な下調べをしており、賢明で意欲的、社の事業をよく知っていて、学習意欲も高いようだった。

 だが、彼の答えも質問も、やや準備されたもののようで、ぎこちないと感じられた。アリーヤが受けた印象では、モリーに見られるような大胆さや起業家魂が、エドからは感じられなかった。もしかすると彼は緊張しているのかもしれないと、彼女は自分に言い聞かせた。あるいは、それがまさに彼の人柄なのかもしれない。

 アリーヤはエドの任務遂行能力を少しも疑わなかったが、彼を起用することには心の高揚を感じなかった。

モリーの“面接”

 モリーの面接をエドと同じ日に設定することは、クリスティーンに提案した時点では、素晴らしいアイデアのように思えた。ちょうど昼時だったので、オフィス近くで2人がよくランチをする場所で会うことは、ごく自然だった。だが、そのカフェに入るとすぐに、この立て続けの面接がエドには不公平であることにアリーヤは気づいた。

 モリーと挨拶するときには、やはりハグするのが自然だったし、彼女のプロジェクトや家族の簡単な近況を尋ねずにはいられなかった。2人とも、同じメニューを注文した。カレー味卵サラダの山盛りだ。

 しかし、ウェイトレスがいなくなるとすぐに、モリーは本題に入った。「私たちは1日に10回メールをやり取りしますし、ランチもよく一緒にしますが、これは正式な面接として臨みたいと思います」

 アリーヤは微笑んだ。「もちろん」

 アリーヤはクリスティーンからのアドバイス通り、エドに尋ねた質問と同じか、少なくとも類似の質問をした。

「この仕事に興味を持っている理由を教えてください」と切り出した。居心地が悪かった。アリーヤはその答えをすでに知っていたが、モリーのために、2人が親しくないかのように進めた。

 答えが返ってくるたびに、アリーヤはモリーに見出していた可能性を再確認した。モリーは社の事業について深い知識を示し、複数のマーケティング・プログラムにわたるコラボレーションと、定期購買プログラムの成功を足掛かりにする考えを見事に提案した。モリーはエドと同様に洗練されていて、思慮深かった。さらに、彼より人柄も温かく、自分をよくわかっているようでもあった。

 2人でオフィスに戻る道すがら、アリーヤはもう決定だと思った。もう少しで声に出して言うところだったが、自制した。正式な決定はまだ出ていなかった。だが、モリーの笑顔を見てアリーヤは、自分の望み通りに事が進むと目をかけている後輩が自信を持っていることを知った。