新年度、昇進したり人事異動になったりして、自分の属する組織の課題を痛感する機会やその解決に悩む人が増えているのではないでしょうか。あるいは長年にわたる制度疲労で、いよいよ自ら主導して変革する必要があるという事態になることもあるでしょう。今月号では、「会社はどうすれば変われるのか」というテーマで特集を組みました。
組織文化や社風を
変革の触媒として活用する
前号の4月号では「その戦略は有効か─転換点を見極める」というテーマで、戦略の変更を見極める意義や方法を特集しました。では、変わる必要性がある時、「どうすれば適切に変えられるか」。今号はこの点に焦点を当てました。
変革の対象は戦略、リーダー、組織など、状況によって異なりますが、たとえば野球やサッカーなどプロスポーツのチームの変革を想像していただくと、特集内容がわかりやすくなります。
勝てるチームになるために何を変革すべきか。リーダーや戦略の一新は即効性がありそうですが、組織文化を無視すればチーム崩壊を招くかもしれません。しかし、風土の変容がなければ目標達成は不可能というチームもあります。
一方、常勝状態にはなったけどファンが離れた、では困ります。このように変化のポイントはまちまちですが、個々の事情に合う変革を考えるうえで、今号に掲載された、異なる視点による5つの論考は役に立つかと思います。
第1論文は特集の序論的であり、実践的です。変革の継続が重要という前提の下、「何を、どう変えるか」についての手順など、具体的に提言しています。
変革の文字通りに企業を大きく変える場合、その特徴を根本において決定付けている組織文化は無視できませんが、現実にはその転換は容易でなく、それ以外を変えることによって、目的達成をもくろむケースが多くなります。
しかし、第2論文ではその考えを否定します。競争優位の源泉としての社風を企業変革の触媒とすることの意義を論じます。
事例になったのは、150年の歴史を持つ米国の大手保険会社エトナ。業績低迷でトップ交代が続いた1990年代後半、5年間で4人目のCEOになって、ようやく大リストラを成功させ、経営を復活させたというケースですが、そこで有効だったのが、社風を尊重して社員の誇りに訴える手法でした。
同じ結論を、長年の研究の集大成としてまとめているのが第3論文です。200を超える組織、2万5000人の従業員を対象にした調査により、組織文化の特性を抽出しています。
16の項目について自己採点することで、所属する組織の特性を把握できる仕掛けも付いています。本稿で示される方法をもとに、組織文化を活用した変革が考えられます。