職場でトラブルメーカーを歓迎する人などいない。だが、周囲を困らせたり、何の前触れもなしに予定を変更したりするなどして、争いや時間の無駄を引き起こす同僚は必ずいるものだ。しかるべき理由もなく周囲を困らせる変わり者や、目立ちたがり屋もいる。規則を破ること自体を楽しみ、その過程で他人に迷惑をかける人もいる。

 その一方で、「規則を破ることで貢献する」方法を知っている人もいる。パルミエーリのような反逆者は、尊敬と注目に値する。なぜなら、私たちはそこから多くの教訓を得られるからだ(自分がどのタイプの反逆者なのか気になる人は、この無料診断を試してみればわかるだろう)。

 最も大事な教訓の1つは、困難な状況――ピザを食べたい子ども――に直面すると、私たちは総じて自動的に何を「すべき」かを考えてしまい、何が「できる」かを自問しないことだ。

 私と同僚は、こんな実験を行ったことがある。被験者には、望ましい選択肢がなさそうな、倫理的に難しい問題を投げかける。そして、「何をすべきか」あるいは「何ができるか」という質問をした。

 その結果、「何ができるか」と尋ねられたグループのほうが、クリエイティブな解決策を生み出すことがわかった。「何をすべきか」という考え方で問題に取り組むと、その選択肢の中でトレードオフをすることしかできなくなり、もっともわかりやすい1つの答えに向けて思考が狭まってしまう。ところが、「何ができるか」と考えると柔軟な思考が保たれ、トレードオフを考える過程が刺激となり、クリエイティブな解決策を生み出せるのだ。

 とはいえ職場では、「何ができるか」と考える人は、物事を遅らせる人だと見なされるのもたしかである。「もし〇〇なら?」「〇〇はどうだろう?」という問いかけは、議論に選択肢を加え続けることになるからだ。しかし反逆者は、時間のプレッシャーに抗ってじっくりと考えるひと時を持つことは、常に有益だと心得ている

 その究極的な例を見てみよう。2009年1月、USエアウェイズの機長チェズレイ B. "サリー"・サレンバーガーが操縦するジェット機は、ニューヨークのラガーディア空港を離陸した直後、鳥の群れに衝突し、両翼のエンジンが止まってしまった。乗客乗員155人の命を預かるサリー機長には、高層ビルの立ち並ぶ街で着陸する場所を探す時間がわずかしかない。

 ほとんどの機長であれば、最寄りの空港への着陸という最も一般的な方法を試みて、悲惨な結果を招いただろう。ところが、サリー機長は標準的な緊急対応手順(何をすべきか)に従いながらも、同時に「何ができるか」をあえて考えた。そして、航空機をハドソン川に不時着させようと決断し、全員の命を救ったのである。