サブスクリプション契約と
フリートマネジメントサービスが成長

――コネクテッドについてはいかがですか。

 コネクテッドというのは、テレマティクスという名前で20年間の市場実績があり、すでに普及しているともいえます。日本、中国、欧州及び米国では自動車販売台数の約10%がコネクテッド化しています。自動車がIoTのひとつと考えることで、コネクテッドという名前に更新されたと考えればいいでしょう。

 このように普及期にあるのに、なぜ認知されていないかといえば、たとえばビッグデータやインターネットを使ったサービスはマネタイズが難しいからです。

 しかし、数あるコネクテッドサービスの中でサブスクリプション契約が有望ではないかと見ています。

 サブスクリプション契約は、リース契約のようなものです。リースとの違いは車の交換が可能であることです。たとえば、ポルシェなら、同社のすべての車種の利用が可能であるばかりか、好きな場所で借りることができ、それをスマートフォンで予約できます。インターネットを使って、安価で利便性の高いサービスが提供できます。

 これによって大きな影響を受けるのは、販売店です。欧州のあるラグジュアリー完成車メーカーは、今後、すべての販売の半分をこのサブスプリクション契約で行うと発表しています。この流れにより、販売店はコンシェルジュ化し、車を売るのではなくサービスを売る、ということになるでしょう。そして、対面販売は減り、店舗は減少しますが、サービススタッフは拡充されるでしょう。

 サブスクリプション契約は、特にラグジュアリーブランドにおいて、ユーザーを単一のブランドに囲い込むことに優位性があります。

 EVには電池劣化問題というものがあります。電池の劣化は、走行可能距離の減少を招き、その結果、中古価格の低下が起こります。ユーザーにとっては車という資産が減少してしまうということになります。ところが、サブスクリプション契約なら資産価値が減るというマイナス面を考えなくて良いので、EVによるブランドの価値は毀損しません。

 この意味で、サブスクリプション契約もまたEV普及を促進する可能性があります。たとえばボルボ社の新ブランド、ポールスターは、サブスクリプション契約のみで提供される予定です。

 商用車についても、サブスプリクション契約が大きな変化を生む可能性があります。従来ユーザーとの接点を多く持っているのはリース会社でした。しかし、ユーザーがサブスクリプション契約を選択すれば、商用車完成車メーカーは直接ユーザーとサブスクリプション契約を行い、ユーザーとのタッチポイントも増加し、結果、売上及び利益が増加する可能性があります。

 フリートマネジメントサービス(FMS)という潮流もあります。商用車向けに「車両追跡」、「業務管理」、「運転手管理」、「法規対応」、「経費削減」などのサービスを、コネクテッド技術を使って提供していくものです。車のメンテナンス、運転手のマネジメントから、渋滞状況の配信などの実務面まで、車まわりのすべての面倒を見るサービスです。このビジネスのメリットは、端末の車への搭載と、管理者側のサーバー等の導入によりイニシャルコストが高くなり、他社への乗り換えにはスイッチングコストが発生することです。

 つまり1度ユーザーをつかんだら、それを維持しやすいのです。北米で普及率は10%で、ベライゾンがすでにこの分野で一定のシェアをおさえています。今後は中国及び東南アジアが成長市場と目されています。このFMS市場は企業の買収合戦が繰り広げられるなど、市場は活況を呈しており、様々なスタートアップ企業も出現しています。日本のみならず、シンガポールや中国でもこのビジネスは注目されています。

 コネクテッドサービスでは、サブスクリプション契約とFMSの2つが今後の成長分野だと考えています。しかし、この2つの日本での認知度は低く、新しい競争軸が生まれているという意識がないのは危機的です。