パーパスを定義することは
CSVの実現に不可欠だった

編集部(以下色文字):高岡さんは、「パーパス」という概念がまだそれほど注目されていない時期から、企業がパーパスを考える重要性に言及されていました。そこに着目されたきっかけを教えてください。

高岡(以下略):ネスレは、創業150周年に当たる2016年に「生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献します」というパーパスを定義しました。ネスレという企業が何のために存在しているのかを、明確化したのです。

 私たちはその数年前から、パーパスに関する議論を始めていました。ネスレでは10年前より、事業活動における原則としてCSV(共通価値の創造)を掲げています。株主や従業員などすべてのステークホルダーとともに社会全体のために価値を創造することが、長期的な成功につながると考えたからです。ただ、社内的にはCSV自体が唐突に提示された印象を持つ人もいたので、その目的や意義を理解してもらう必要がありました。すでにビジョンを掲げていましたが、それは誰もが自分の問題として理解できる表現とはいえませんでした。耳触りはよくても、その中身をきちんと理解できている人は少なかったと感じています。