組織全体で「やり抜く力」を発揮する

 優れた功績を上げる人々は、並外れたスタミナを持ち合わせている。たとえすでにトップスピードで走っていても、彼らはさらなる改善を目指し、たゆまず努力する。たとえ仕事で犠牲を強いられても、自分の仕事を愛する気持ちは変わらない。たとえ安易な道が手招きしても、彼らの決意は揺らがない。こうしたさまざまな強さを見事に兼ね備えていることを、筆者たちは「やり抜く力(グリット)」があると表現する。

 やり抜く力を見れば、困難な目標を達成する者を予測できる。たとえば、陸軍士官学校が実施した調査によると、士官候補生が訓練に耐え切れるかどうかを判断する材料として適切だったのは、学力試験の点数や運動能力よりも、やり抜く力だった。やり抜く力を見れば、高校や大学を卒業する可能性や、営業職のようなストレスフルな仕事での業績を予測できる。筆者たちはまた、非常に要求の厳しい多くの分野で、経営トップに上り詰める時にも、やり抜く力がそれを後押しすると確信している。

 医療の分野では長らく、患者たちは個々の医師や看護師のやり抜く力を頼みにしてきた。しかし現代医学において、高度な医療を施す仕事は複雑化しており、どれほど情熱にあふれた医師でも、一人ですべてを行うことはできない。今日の優れた医療には、優れたコラボレーション、すなわち、改善のためにたゆまず努力する臨床医で構成される、やり抜く力を持ったチームが不可欠だ。しかし、必要なのはそれだけではなく、医療機関は医療提供者全体で、やり抜く力を発揮しなければならない。