●自分への失望
多くの場合、リーダーが法外に高い基準を求める相手は、直属の部下だけではない。エグゼクティブのコンサルティングを行ってきた筆者の経験によれば、リーダーの不満感が自分自身に向かうことも少なくない。ベストを尽くしたことに満足する、達成できた成果を誇りに思う、といった能力を持たないリーダーは、仕事に対する喜びやプロとしての満足感を得ることができない。
あなたがもしそのようなリーダーなら、みずからのパフォーマンスについて、自分に語るストーリーに注意を向けてほしい。能力不足が主題となっていたり、自分の成果や能力を誇りに感じることが困難だったりする場合、高い基準が自己認識を歪めてしまっている可能性が高い。
●他者の自信喪失
共著Impossible to Please(未訳)の中で、ニール・ラベンダーとアラン・カバイロアは次のように述べている。「コントロール好きな完璧主義者とともに仕事するか、そのような人の下で働く場合、怒りやフラストレーションを感じ、さらに悪いことには、激しい批判を真に受けて、自分は何もできないと劣等感を覚えるようになることがよくある」
あなたの高い基準が他者に力不足だという感覚を起こさせているなら、いずれ彼らは自信を失い、ベストを尽くす努力をやめてしまうだろう。内心ではあなたに不満を抱き、たび重なる批判を恐れつつも、自分の能力を疑うかもしれない。
最悪なのは、問題の原因として、どこまでがあなたの不公平な基準にあり、どこから自分の力不足のせいなのかを見極められないため、自己改善ができなくなることだ。前述のCEOの直属の部下が、そのような状況をうまく表現している。「しばらくすると、何もしないことが無難になってしまう。その日、彼女が大声で叫ぶ仕事をすればよくなるのだ」
●組織のレジリエンス(回復力)低下
メンバーたちが、常に能力を疑われ、批判されていると感じているチームは、挫折を経験したとき、そこからの回復に困難を感じる。メンバーたちは、難題に直面したとき、創造性を発揮するのではなく、立ちすくんでしまうのだ。リーダーが四六時中不満を抱いている状態にあると、問題に対する機知に富んだ対応能力が干上がってしまう恐れがある。
大きな問題に直面した際、組織内で総力をあげた解決への取り組みができるかどうか心許なく思えるなら、より高い基準をクリアするよう駆り立てるあなた自身に、その原因があるかもしれない。そして、チームに達成してもらいたい目標があるとき、あなたの高い期待がそれを成し遂げるチームの能力を損ねている可能性があるのだ。
こうした問題が組織内に見受けられるなら、以下のような対策を試すとよい。