モニター デロイトは2019年2月28日、『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』と共同でセミナーを開催した。テーマは「SDGsが問いかける経営の未来」。SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みをいかに企業の競争力につなげていくか、それに伴い経営モデルをいかに変革していくかは、多くの経営者にとって非常に関心の高いイシューである。想定を上回る参加者があったセミナー当日の模様を要約してレポートする。
パネリスト
三菱ケミカルホールディングス 取締役兼代表執行役社長 越智 仁氏
スリーエム ジャパン 代表取締役 副社長執行役員 昆 政彦氏
丸紅 執行役員 秘書部長 兼 広報部長 島﨑 豊氏
世界自然保護基金(WWF)ジャパン 事務局長 筒井 隆司氏
モニター デロイト ジャパンプラクティス リーダー 藤井 剛
モデレーター
モニター デロイト パートナー 日置 圭介
セミナーは主に2つのテーマに関して、パネルディスカッション形式で行われた。1つ目のテーマは、「サステナビリティ潮流と社会・経済価値を創出する取り組み」。冒頭で、5人のパネリストがサステナビリティという潮流に対する認識、その潮流の中で自社が直面した課題、それに対する取り組みなどを短く紹介した後に、パネルディスカッションに移った。

SDGsの取り組みを競争力につなげ
社会価値と経済価値を真に両立するには
日置 まずはSDGsや社会課題への取り組みを、企業としてどのように競争力につなげていくかについて、議論していきたいと思います。
CSV(共通価値の創造)経営の本家とも言えるネスレやユニリーバは、長期的に一定レベルの収益を出し続けながら、社会課題の解決に向けた取り組みを行っていることが評価されています。
つまり、社会価値と経済価値を両立させているからこそ、高く評価されているわけです。しかし、これは企業にとって容易なチャレンジではありません。
この社会価値と経済価値の両立について、「4象限の事業ポートフォリオ管理」を掲げる三菱ケミカルホールディングスの越智さんからうかがいたいと思います。
越智 我々は収益性と資本効率性、成長性を軸に「次世代事業」「成長事業」「基盤事業」「再構築事業」の4つに分けて事業ポートフォリオを管理しています。次世代事業は、じつは社会課題や環境問題のニーズが深ければ深いほど、成長性が高くなるし、持続性も高まります。

取締役兼代表執行役社長
越智 仁氏
そこで、新規事業を考える際には、これまでのように既存の領域から少し足を踏み出して事業をつくり上げていくだけではなくて、10年先をじっくり見据えて、その中でどういった社会課題が起きるのか、それに対してどのようなプロセスやマテリアルを通じてソリューションを提供していくのかを考えていきます。
収益性や資本効率性と、社会価値の視点は必ずしも一致しないと思われてきましたが、人々や社会の価値観は、大量生産で安いものを所有する世界から大きく変わっています。その変化をしっかり押さえないと、もはやビジネスは成り立たなくなっているのです。