グーグルのような「10倍思考」を多くの企業ができない理由
ある大手複合企業のイノベーション担当責任者は最近、部門横断的な10のチームを設置し、「事業を完全に考え直せ」という大胆な目標を与えた。これまでにない斬新なアイデアやアプローチを促すため、会社は各チームに対して、顧客調査やプロトタイプソリューションにデザイン思考を適用し、リーンスタートアップ手法を用いるよう指導した。
このイノベーション責任者は、10の変革案が出てくるものと考えていた。ところが実際に受け取ったのは、あるツールにデータストリームのネット接続を行うといった方向の提案ばかりだった。彼は唖然とした。新しい過激な発想はどこにあるのか。デジタルプラットフォームの構築やビジネスモデルの転換、製品の改革を検討した者はいないのか。
イノベーションツールがますます高度化しているにもかかわらず、あらゆる種類の企業が「漸進的思考」の傾向に悩まされている。漸進的イノベーションは成長ポートフォリオの中で一定の地位を占めてはいるが、長期的に企業を支えることはないだろう。どうすれば企業はもっと大きく有意義な考え方ができるのか。創造性を抑制しているものは何か。なぜすべての企業がグーグルのような「10倍思考」──よくある10%の改善ではなく10倍の改善につながる考え方──をできないのか。