では、目的意識の強い従業員が燃え尽きないように、リーダーは何ができるだろうか。エリソンは、情熱がもろ刃の剣になることを意識すれば、「常につながっている」という精神を和らげることができると主張する。
「自分がやっていることに夢中になる人は、境界線をうまく引けるとは限らない。境界線を引いても構わないと、教える必要がある。それは利己的ではなく、無私の行為だ。仕事の効率が上がって、自分が成果を提供したい人々を[助けて]向上させることにつながる」
職業心理学者でAlso Human(未訳)の著書があるキャロライン・エルトン博士も、「部下の健康に留意すること」はリーダーの責任だと語る。具体的には、欠勤や離職率などの「間接的な指標」を注視することや、明確な方針を導入していじめや誹謗中傷に適切に対処し、内部告発が仕事を失う危機に直面しないような環境を整えるといった戦術がある。
自己認識や自己主体感は重要だが、疲労困憊した従業員にその責任を背負わせるべきではないと、エルトンは強調する。彼女はさらに、これは組織的な問題であり、リーダーは「『R』ワードを捨てる」ことを考えてもいいだろうと語る。「R」ワード、すなわち「レジリエンス」は、個人が自力で燃え尽き症候群を避ける、あるいは燃え尽き症候群から立ち直ることができるという考え方につながるからだ。
WHOが燃え尽き症候群を明確に定義し、本物の脅威であると認めたのだから、企業や組織は必要な判断基準や対策プログラム、支援ツールの提供に力を入れることができる。
1日の終わりには誰でも、自宅に帰ってプライベートの生活を楽しみ、目的のある仕事に情熱的に取り組んだ1日を振り返って鼓舞され、英気を養いたい。そのほうが、退屈や倦怠感に襲われるより明らかに好ましい。退屈や倦怠感は、燃え尽き症候群を招きかねない。
ただし、注意が必要だ。自分や部下が仕事に燃やす情熱が、すべてを燃やすほど激しく感じられたら、休息を取る、あるいは休息を取らせるタイミングかもしれない。
HBR.org原文:When Passion Leads to Burnout, July 01, 2019.
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ジェニファー・モス(Jennifer Moss)
職場に関する専門家。各国で講演を行っている。ベストセラーUnlocking Happiness at Work(未訳)などの著書で受賞経験もある。国連の専門家グループ「世界幸福度カウンシル」委員を務める。