●グローバル化をモットーにする

 立派な戦略があっても、それが実行されなければ意味がない。その橋渡しをするためには、社員の行動ではなく思考に注目する必要がある。

 よくある間違いは、たとえば国内市場向けに設計した製品を、海外市場にそのまま持ち込めると考えることだ。製品の微妙な好みや使い方、ニーズは、国によって異なる。最初から複数市場に投入することを念頭に置いて製品や機能を設計し、キャンペーンを企画し、プロセスを策定しよう。

 このアイデアを成文化して企業文化の一部にすると、社員の日常業務にグローバル思考を植えつけやすくなる。

「グローバル思考」を社員の習慣にしてもらうために、この社内イニシアアチブに「グローバル態勢」や「グローバルフレンドリ―」「グローバルファースト」といったキャッチーな名前をつけるのもいいだろう。さまざまなチームに、「グローバルチャンピオン」や「グローバルアンバサダー」を指名して、よりグローバルなプロセスの設計を進めてもらうのもよいだろう。

 ●国際性を高める

 企業のグローバル化を加速する最善の方法は、社員の国際経験を増やすことだ。そのような経験は、迅速あるいは簡単に得られるものではないが、そのスピードを速める方法はいくつかある。

 国際経験のある人材をもっと採用する

 外国で仕事をした経験があったり、国際的な役割を担ったりしたことがある人は、なかなか見つからない貴重な存在だ。標準的な募集要項に、「国際的な経験があることが望ましい」といった一文を加えれば、応募者のレベルを高められるだろう。留学経験者や複数の言語を話せる人、あるいは外国居住経験者や就業経験者、特に外国移住者を積極的に探すようリクルーターを指導することを検討してもいい。

 国際経験がある社員を発掘して活用する

 企業が、すでに社内に存在するグローバル化のポテンシャルに気がついていないことは非常に多い。社員調査を実施して、話せる言語、働いたことや勉強したこと、住んだことがある国をすべて申告してもらおう。こうした社員は戦略的な財産なのに、まともに活用していない企業がほとんどだ。

 社員に国際的な経験を促す

 可能ならば社員を海外に派遣して、外国の社員やパートナー、顧客から直接学んでもらおう。外国に支店があるなら、また、すでに遠隔勤務を認めている会社なら、ハードルとなるのは時差と就労ビザに関する知識だけだ。できるだけ早く移民弁護士を使って、国際的なモビリティの経験や知識を確保することに投資しよう。外国支店への短期出張ですら、ふだん外国の客と接触することがない社員には、有意義な経験になるだろう。

 組織改革をする

 本社の重要ポジションを外国支店に置くことを検討してみよう。すると、おそらくすぐに、そのポジションを本社に置いておくよりもグローバルな意識が高まる。グローバルな業務をカバーし、1地域だけでなく複数地域で目標を達成できるかどうかが評価対象になる役職を増やそう。こうすると、拠点国の外にも目を配り、国際的なビジネスにプラスとなる判断を下さざるを得なくなる。

 外国支店をつなぐ

 外国支店には独自の文化と特色を持ってほしいと思うかもしれないが、サイロ化を避けるためは、社員が会社のミッションや信念を理解し、全員が同じ方向を向いて活動する必要がある。

 筆者の会社ハブスポットでは、基本理念である「カルチャーコード(文化的規範)」のローカル版を作成している。これは単なるオリジナル版の翻訳ではなく、各市場の文化に適応させている。

 さらに、各国の社員がよその国の社員とつながっていることをもっと実感できるように、国際的なバディープログラム「トモダチ」をつくった。毎月、テレビ会議システムで数百組の「バディー」がおしゃべりをするイベントが開かれる(たいていのペアはタイムゾーンが異なる場所にいる)。このプログラムは大人気で、管理職や幹部も外国にいる社員とペアをつくっている。

 ●国際的な運営グループを設置する

 グローバル化の重要性に注目してもらう、もう一つの方法は、国際的な事業の課題を明らかにし、その解決計画を練る国際的な運営グループをつくることだ。このグループには、全職能(最高責任者レベルとバイスプレジデントレベルの幹部を含む)から少なくとも一人の代表が参加し、定期的に会合を開くべきである。

 そのミーティングでは、国際的な業績の測定方法を確認したり、なんらかの目標を達成できない原因を検討したりする。たとえば、ある月、ある市場の成長が鈍化したとする。それは、その市場特有の社会経済的要因のせいなのか。為替相場に変化があったのか。現地の営業職採用ペースが落ちたのか。それとも、何かほかの異変が現地であったのか。運営グループはこうしたことを検討して、会社が次に取るべき措置を勧告する。

 ●古いシステムやプロセスに注意する

 国際的だが、まだグローバルになっていない企業が直面する最大のハードルの一つは、みずからの過去の意思決定である。

 国際的なビジネスが勢いに乗る前に選ばれたプロセスやソフトウェア業者が進歩を妨げたり、会社がグローバルになるのを妨げたりすることは多い。これは平均以上の国際的成長を遂げた企業に、とりわけよく見られる。事業の拡張に合わせて、社内のプロセスやインフラをグローバル化するには時間がかかるためである。

 よくあるのは、一つの言語または通貨だけを想定して試験され選ばれたソフトウェアが、複数の言語や通貨をサポートするようカスタマイズできないといった事態だ。現地のインプットなしで、本社の誰かがレビューすればよいプロセスも、同じような問題を引き起こしやすい。米国中心の企業にとってはうまく機能していたシステムやプロセスも、グローバルなビジネスの極限のプレッシャーや、それに伴う複雑性に耐えられないことが多い。

 ●組織改革には時間がかかることを理解しておく

 グローバルな成長を実現するという会社の目標は、それをサポートする社内のグローバル化に必要な根気や規律と衝突することが多い。したがって、すでに国際的な企業なのに、グローバルに成長することが予想以上に難しくてフラストレーションがたまったときは、あなたの会社と社員が、真のグローバル企業になるための正しい道のりにあることを思い出そう。

 グローバル企業になるための組織改革は、通常、事業拡張よりも時間がかかるものだ。だが幸い、その組織改革は事業拡張を一段と可能にするはずである。


HBR.org原文:5 Ways to Foster a Global Mindset in Your Company, July 05, 2019.

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ナタリー・ケリー(Nataly Kelly)
ハブスポット(HubSpot)のバイスプレジデント(国際オペレーション・戦略担当)。著書にFound in Translation(未訳)がある。