我々は、地位のあるリーダーが、職場で無礼な振る舞いをした部下とその被害者を、どのように見るかについて研究を始めた。

 我々はまず、カジュアルなレストランチェーンを運営する企業を研究した。各従業員に、同じ店舗で働く他の従業員全員の名前のリストを渡し、自分が誰に対して無礼に振る舞い、誰に無礼なことをされたかにを報告するように頼んだ。次に、マネジャーに対して、従業員それぞれの行動を評価するように頼んだ。我々が調査したのは5店舗で、従業員169人のうち149人(88%)、マネジャー14人のうち13人(93%)に参加してもらった。

 注目すべきは、自分は無礼な振る舞いの「被害者」だと報告した従業員が、たいていの場合、マネジャーたちからは無礼な振る舞いをした「張本人」と見られていたことだ。そして、他人に無礼な振る舞いをしたと周囲が報告した人でも、その人が上司と親密であるか、または高い業績を上げている場合には、マネジャーから無礼な振る舞いをした張本人とは見なされなかった。

 この発見が他の組織でも共通かどうかを確かめるべく、我々は大学の学生たちに協力を依頼した。彼らの友人や家族の中から働いている社会人を募り、幅広い業界、組織、職種の従業員やその上司を対象とする調査ができるようにした。

 従業員にはオンライン調査で、どのくらいの頻度で無礼な振る舞いをしたか、あるいはされたかを報告してもらい、上司の名前とメールアドレスを尋ねた。次に、上司にはその従業員の振る舞いについて、別のオンライン調査で評価してもらった。

 我々は、匿名化した372組の上司と部下のペアの記録を追った。そこには、事務職、整備士、歯科衛生士、配管工、看護士、その他さまざまな職種が含まれていた。

 すると予想通り、同じ結果が出た。どのような職場でも、上司は部下の行動を評価するときに、同じようなバイアスに陥ってしまうのだ。

 この2つの調査は、問題の存在を明らかにしているが、重大な限界がある。我々が過去に行った調査でもわかったように、無礼な振る舞いを受けたことのある人は、自分自身も無礼な振る舞いをするおそれがある。

 したがって、無礼な振る舞いを受けた人を非難するような評価を下している上司たちは、実は正しく評価できているのかもしれない。すなわち、被害者は加害者でもある可能性があるのだ。その場合、リーダーたちの評価は、バイアスがかかっていないといえるだろう。