この可能性を排除するために、従業員が無礼に扱われた「経験」と、彼ら自身が無礼な「振る舞いをした」ことを分ける、2つの実験を試みた。
我々が教えるMBAのコースや、リンクトインなどのオンライン・フォーラムを活用して、現職のプロフェッショナルを募った。そして、自分たちが昇進してマネジャーになり、数週間部下たちの仕事ぶりを観察した後に、上司として部下たちを評価せよと言われた場合を想定するように、と参加者に依頼した。
参加者にはその後、架空の従業員10人のプロフィールを見せて、慎重に彼らの勤務評定をするように依頼した。10人の従業員の中には、無礼な扱いを受けたこともあれば、無礼な態度を示したことのある人物もいた。そうした人物プロフィールの一つは、次のようなものである。
架空の従業員の中には、無礼な扱いを受けても、他人には無礼な態度を取らない人もいる。たとえば次のような人だ。
また、無礼な扱いをされたことがない人物も何人か入れた。
データを集計したところ、この調査の参加者は、無礼な行動をしたのは被害者のほうだと見ていることがわかった。従業員の中に無礼な振る舞いを明らかにしなかった人(アレックスのように)を入れたことで、「何も悪いことをしていないときでさえ」被害者のほうに無礼な扱いを受けた責任がある、と捉えられていることも示せた。
事態は、さらに悪くなる。従業員が優秀か(アレックスのように)、または業績が悪いか(クリスのように)に関する情報をはっきり出した場合にも、リーダーのバイアスが被害者の勤務評定にまで及んでいるかどうかも調べてみたら、まさにその通りだった。「実際の」職務遂行能力にかかわらず、無礼な振る舞いの被害者は、無礼に扱われない従業員より大幅に低く評価されたのである。
勤務評定は、報酬や昇進に関する決定に重大な影響を及ぼすことが多い。したがって我々の調査結果によれば、職場での無礼な振る舞いの被害者は、他のいくつかの重要点でも悪影響を受けており、泣きっ面に蜂という状況に陥りかねない。