では、リーダーたちは勤務評定を行う際に、どうすればバイアスを克服できるだろうか。
我々が勧める方法は、リーダーたちに裁判官や仲裁人向けの研修セミナーを受けさせることである。そのようなセミナーでは、関連のある情報と関連のない情報を区別することを学べる。採用面接中であれ勤務評定中であれ、仕事に関わりのある行動に的を絞ることで、効果的に主観を排除し、判断の精度を上げることができる。ベテランの裁判官でさえ、無関係な背景情報や個人的な要素の影響を受けるおそれがあるため、研修を通じてリーダーは、自分たちの意思決定に及ぼしかねない影響力が存在するという認識も高めるべきだ。
各組織が米連邦司法センターの例にならうのがいいだろう。連邦司法センターでは、「駆け出し裁判官の学校」と親しみを込めて呼ばれている研修の一部として、まさにそれを行っている。新米裁判官にみずからのバイアスをよりはっきり認識させ、そうしたバイアスが判決に影響を及ぼすのを防ぐ研修である。
職場での意思決定者として中心的な役割を果たすことを考えると、リーダーたちが従業員の行動を公平かつ正確に評価することは不可欠である。
我々の研究で、マネジャーが、無礼な振る舞いの被害を受けた従業員のほうを非難する傾向にあるという残念な結果が明らかになった。職場で他人を評価する責務のあるリーダーたちが我々の研究結果を見て、自分たちにはいっそうの熟慮が必要だと肝に銘じてくれることを願う。
HBR.org原文:Why People Get Away with Being Rude at Work, July 10, 2019.
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シャノン G. テイラー(Shannon G. Taylor)
セントラルフロリダ大学経営学部准教授および博士課程コーディネーター。研究対象はリーダーシップと職場での不当な扱い。
ドナルド H. クロムパー(Donald H. Kluemper)
イリノイ大学シカゴ校経営学部准教授。インスティテュート・フォー・リーダーシップ・エクセレンス・アンド・デベロップメント(iLEAD)共同ディレクター。研究対象は人格、リーダーシップ、職場での不当な扱い。
W. マシュー・ボウラー(W. Matthew Bowler)
オクラホマ州立大学スピアーズ・スクール・オブ・ビジネス准教授。研究対象はリーダーシップ、ソーシャルネットワーク、勤務評定。
ジョナソン R. B. ハルベスリーベン(Jonathon R. B. Halbesleben)
アラバマ大学医療マネジメント学部ヘルスサウス記念講座部長。カルバーハウス・カレッジ・オブ・コマース上級副学部長。研究対象は従業員のストレスと健康。