多くの人が「自分は親しみやすい上司」という自己評価を下している。だが、たいていの場合は過大評価であり、実際は真逆である。あなた自身は自分がフレンドリーな人間だと思っていても、CEOやCOO、マネジャーといった役職自体がプレッシャーの原因になっていることもある。自分が職場でどれほど恐れられているのか、その実態を把握して、表情や日々の発言などに気を配ることが重要である。
ほとんどの人は、自分は職場で親しみやすい人物だと思われていると信じている。私たちが4000人のプロフェッショナルを調査したところ、「部下や後輩に怖がられることは絶対に、またはめったにない」と答えた人が3分の2に上った。
相手が自分よりも地位が上または同等の場合、「自分は親しみやすい人物だ」という確信は一段と強まる。「あなたは同僚や上司に怖がられているか」という問いに対して、相手が同僚の場合は回答者の75%、上司の場合は80%が「その可能性は極めて低い」と答えた。
しかし、過去5年間の別の調査から、多くの人が、同僚のことを怖いと思っているために、組織で意見することを躊躇していることがわかっている。別の研究では、特にマネジャー職にある人は、自分が予想以上に怖がられており、それが仕事の障害になっていることに気づく必要があることを示している。
たとえば、あるグローバル金融機関のフレンドリーな最高執行責任者(COO)は、トレーディングフロアを歩いているときに行った軽いアドバイスが、実はカオスを引き起こしていたことを、数年経って初めて知ったという。同僚たちは、そのアドバイスを厳格な指示をと受け止め、その通りに従っていた。それは、彼らがCOOを恐れていたからだ。そして、誰もそれを彼に伝える気になれなかった。COO自身は、問題があってもみんなが黙っているのだとは思いもしなかった。
もちろん厳しい交渉の最中や、許されない行動を叱責するときなど、マネジャーたちが怖いと「思われたい」ときもあるだろう。だが、ほとんどの場合、マネジャーたちは近づきやすい存在であるべきだ。社員が怖気づいて意見できなければ、仕事の質が低下し、学ぶべきチャンスを逃し、不品行が放置され、イノベーションが実現せずに終わってしまう。
沈黙や盲目的な服従は、もっとひどいことにつながる恐れもある。ボーイングの新型機「737MAX」の安全性問題や、ゴールドマン・サックスの1MDB資金流用との関係を考えるといい。どちらのケースでも、社員が声を上げていれば、危機を回避できたかもしれない。
そうだとすれば、自分が職場でどれだけ怖いと思われているかを過小評価せずに、「自分の怖さ」を正確に認識して、そのレベルを下げる方法を知ることが重要だ。
自分に貼られたレッテルを知る
まず、みんながあなたを怖がっている理由を理解しよう。これが難しいのは、多くの場合、「怖い」のはその人の性質ではなく、「人間関係の経験」から生じる感情だからだ。
「怖い」という認識は主観的なもの(相手による)で、コンテクストにより(状況による)、自分ではどうしようもないことが多い。前出の金融機関COOのように、フレンドリーで善意に満ちていても、レッテルのほうが大きなパワーを落ち、周囲との関係を定義する場合がある。
こうしたレッテルは、「上司」「人事部長」「CEO」といった肩書きの場合もあれば、「背が高い」「自信満々」「ポテンシャルが高い」といった、地位や権威が高いイメージを伴う特徴の場合もある。フラットであることが自慢の組織でも、こうした社会的上下関係はつきまとうものだ。
あなたが高い地位のレッテルを貼られているほど、周囲は、あなたにどう思われているか心配し、あなたを怒らせないようにする。そして、あなたに怖気づいて、意見することを躊躇する。
さらに、レッテルを貼られているということは、あなたは比較的特権的な立場にいるから、自分自身は気軽に人に意見するだろう。「優位性の盲目」(特権的な地位にある人が、誰もが自分と同じように物事を見ていると思い込むバイアス)のために、周囲が意見するのに困難を感じているとは思いも寄らない。
最近の私たちの調査では、地位の高いマネジャーほど、意見するのは簡単だと思っている。また、自分に自信があるばかりに、地位が低かったときは上司に意見することにリスクが伴ったことを忘れていることが多い。
自分にはどんなレッテルが貼られているか考えよう。あなたの肩書きには、どのように怖い要因が伴うだろう。あなたには、地位や職務とは無関係に、パワーを連想させる特徴(背の高さや自信)があるだろうか。それを怖いと思うのは誰なのか。
こうしたことをきちんと考えなければ、周囲との関係はこれまでと変わらないだろう。逆に、地位や権威のイメージとのギャップに気がつけば、他人とこれまでとは違う関わり方ができるようになる。その具体的なステップを以下に紹介しよう。