表情に注意

 私たちは哺乳類として、人の身振りから意味を読み取るようにできている。マネジャーは自分でも気がつかないうちに、「話しかけてくれ」ではなく、「黙れ」という無言のサインを出していることが多い。

 ある30代でポテンシャルの高いリーダーのケースを紹介しよう。急速に昇進した彼は、新しい職務をこなすのに苦労していた。だが、自分の弱さや不安を隠すために、ナーバスなときも穏やかな顔を装っていた。そんな自分のぼんやりした表情を、同僚たちが威嚇的だと受け止めたのを知って、彼はショックを受けた。怖気づいているのは自分のほうだと思っていたからだ。

 顔をひくつかせたり、目を細めたりといった表情が、どんなメッセージを送っているか理解しよう。『この「聞く技術」で道は開ける』の著者ナンシー・クラインは、このことを「自分の顔を知ること」という。人は深く考え事をしているとき、しかめ面をしがちだが、それは他人から見ると否認のサインと受け止められやすい。部下から見ると特にそうだ。自分は微笑んでいるつもりでも、薄ら笑いに見えるかもしれない。もしかするとあなたは、もともと「怒り顔」で苦労しているのかもしれない。

 自分が意図せぬ表情に気がつくためには、ぼんやりせずに、目の前のやり取りに意識を集中しよう。他の人と話すときは気が散ることを最小限に抑えて、自分がどんなメッセージを送っているのかを考えよう。ほかの人を元気づけ、サポートするともに、その人から学ぶ意思を明確にしよう。

 とはいえ、自分の身振りの癖を一気に変えるのは難しい。プレッシャーがかかっているときは、なおさらだ。

 そんなときは、他人の期待を変えよう。あるリーダーは、自分が深く考え事をしているとき、しかめ面をする癖があることに気がついた。そこでチームに、「私にはこういう癖がある。でも、それは不満があるからではないんだと覚えておいてほしい」と伝えたという。

回答を微調整する

 前回誰かが異論を唱えたとき、あなたはどんな反応を示しただろう(前回がいつか思い出せない人は、本当に怖がられていると思った方がいい!)。

 あなたがパワフルな役職に就いているなら、周囲はあなたの反応をつぶさに観察しているはずだ。反論されたときネガティブな反応を示せば(明らかに怒ったり、その意見を無下に切り捨てたり無視すること)、それ以降は反論されることもなるだろう。また、「問題ではなく、解決策を持って来いと」などと言えば、複雑または異例の問題が見つかったとき報告されずに終わる可能性がある。新しいアイデアが提案されたのに、それを無視してプロジェクトを進めるよう誰かに指示を出せば、クリエイティブなイノベーションを提案してくれる人はいなくなってしまうだろう。

 本稿執筆者の一人(ライツ)は最近、数回のレイオフを伴うリストラを実行したリーダーシップチームと仕事をした。CEOは、みんなに気持ちを切り替えて、前に進んでほしいと思ったが、そのチームにはまだ、レイオフのときに会社に裏切られたトラウマを忘れられないメンバーがいた。

 そこで、あるメンバーが当時の苦々しい思い出を語ると、CEOは怒ってその発言を切り捨てた。このCEOのリアクションのせいで、チームメンバーは意見やアイデアを自由に言いにくくなったことがわかった。

 悪いニュースでも、社員が正直に打ち明けられるような、心理的に安全な文化をつくろう。悪いニュースや対立意見を聞かされたとき、自分が通常どんな反応を示すか考えてみよう。その反応が周囲の発言を抑えこんでいる可能性はあるだろうか。

「フィードバック歓迎」だけでは不十分

 マネジャーの中には、「ドアはいつでも開いている」とか「フィードバックや異論は大歓迎だ」と言えば、みんなが本音を語ってくれると思っている人がいる。だが、周囲から怖いと思われるほど、あなたにそのことを教えてくれたり、異論を唱えたりする人は減るだろう。賢いリーダーはそれを理解していてい、もっと直接的にフィードバックや異論を求める必要があることを知っている。

 たとえば、「私がもっと親しみやすいと思ってもらうために、1つだけ重要なことを挙げるとしたら何かな」など、具体的な質問をしよう。あるマネジャーは、自分のチームにこう聞いたという。「私が自分では絶対に気がつかないけれど、本当に知っておくべきだとみんなが思うことは何かな」

 多くのリーダーは、自分の肩書きや、みんなに貼られたレッテルが、どんなに大きな影を落としているか気づいていない。職場の人間関係で、自分がつくり出している距離感やヒエラルキーをもっと理解して、自分の身振りや、言葉での応答や、フィードバックの促し方を調節すれば、その距離を乗り越えるよう周囲を奨励するとともに、本当にオープンな(そして十分な情報に基づく!)リーダーになれるだろう。


HBR.org原文:Managers, You're More Intimidating Than You Think, July 18, 2019.

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メーガン・ライツ(Megan Reitz)
ハルト・インターナショナル・ビジネススクール教授(リーダーシップ・対話)。著書にDialogue in Organizations、共著にMind TimeSpeak Up(いずれも未訳)がある。ツイッターはこちら@MeganReitz1

ジョン・ヒギンズ(John Higgins)
研究者、コーチ、文筆家。著書にThe Change Doctors: Re-Imagining Organizational Practice(未訳)、共著にSpeak Up(未訳)など多数。