変化する経営戦略に対応する

 採用担当の責任者になったばかりの2016年頃、上司の青野史寛(ソフトバンク最高人事責任者兼専務執行役員)から、理想の採用について話を聞いた。筆者は、採用には応募者の母集団を拡大することが重要だと思っていたが、青野は首を振ってこう言った。

「理想は、100人の人材がほしかったら、入社してほしい100人に応募してもらい、全員受かり、入社してもらうことだ」

 採用は一般的に、就職活動の媒体に広告を出したり、大きなイベントに出たりして認知度を上げ、母集団を拡大するのがセオリーだ。応募者数を増やすことで、求める人材を採用できる可能性が高まると考えるからだ。しかしながら、単なる拡大は本気ではない応募者を増やし、選考の負担も増やしてしまう。青野の話から、応募者を単に増やすより、採用人数を応募者数で割った採用率を100%に高めること──つまり、課題は「採用効率」を高めることだと気づいた。