発明家CEOがこれほど特別であるのは、なぜだろうか。

 我々は、発明家CEOはポジティブな効果を持っていると、多くの理由から信じている。発明の経験はCEOに、自社の技術と、それに関連する事業の経営方法について、より深い洞察をもたらしてくれる。

 かつてサンディスクをCEOとして率いたサンジェイ・メロートラは、みずから70件以上もの特許を取得していて、自身の発明家としての経験の影響を次のように表現している。「それは、社の技術のポテンシャルを理解し、立ちはだかる挑戦の複雑さを評価するうえで、大きく役立ちました。そのことは、戦略計画の決定と経営の実行の際に、大きな違いをもたらします。適切な問題に関心を注ぎやすくなるのです」

 発明家CEOはまた、イノベーションのプロセスに直接触れた経験があることで、創造性とイノベーションを育む文化を生み出すのに、より長けていると思われる。たとえば、失敗の許容度が高かったり、自社の研究開発チームと直接関わったりできるため、企業は新たなアイデアやアプローチを商業化するうえで、より機敏になれる。

 それとは対照的に、発明的な性格を持たないCEOは、イノベーションをあまり重視せず、CEOの役割の他の側面(報告、コンプライアンス、内部統制、監視制度など)をより重視すると思われる。

 発明経験があることで、発明家CEOは企業のイノベーションを高めるうえ、自社製品に関する真に説得力のあるスポークスマンにもなりうる。企業のイノベーションが、業界にさらに大きな影響を与えるのに役立っているのである。

 たとえば、アップルの新製品発売が大成功を収めた理由の一つは、CEOのスティーブ・ジョブズが、自社の技術的躍進を世界に売り込んだからだ。彼が言葉を発すると、人々は耳を傾けた。

 発明家CEOが成功する根本的な理由が何であろうと、我々の研究によるエビデンスは次のことを示している。ハイテク企業の取締役会は、あらゆるCEO候補の発明家としての経歴に、大きな関心を払うべきである。発明家CEOは、イノベーションを高めるその独特の能力を、CEOの役割にももたらしてくれるかもしれない。


HBR.org原文:Research: Companies Led by Inventors Produce Better Innovations, September 16, 2019.

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エムダッド・イスラム(Emdad Islam)
オーストラリアのメルボルンにある、モナシュ大学の銀行業・金融学助教授。研究対象は、コーポレート・イノベーション、企業の社会的責任(CSR)、コーポレート・ガバナンス、コーポレート・ファイナンスなど。

ジェイソン・ゼイン(Jason Zein)
オーストラリアのシドニーにある、ニューサウスウェールズ大学ビジネススクールの金融学准教授。主な研究対象は、企業所有、世界中の企業のコントロールとガバナンス、ベンチャーキャピタル、プライベート・エクイティ、イノベーションの資金調達など。