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プレゼンティーイズムが生産性を低下させている
インターナショナル・トラック・アンド・エンジンで変速機用のコンポーネントを設計しているエイミー・ファーラーは、何年もの間、密かに苦痛に耐えていた。たとえば、アレルギー性鼻炎から来る片頭痛があまりにひどくて、会社を1日休むこともあった。ただし、たいていは出勤しており、季節性アレルギー症による鼻詰まりと不快な症状をじっと我慢していた。
「頭を切断されてもかまわないと思うほど頭痛がひどくなることもあります」と、この31歳のエンジニアは言う。彼女はほぼ一日中コンピュータに向かい、三次元ソフトを使って設計にいそしんでいる。
「鼻が詰まって、頭がぼんやりする、頭がズキズキするので目を開けていられない。集中できないのです。何とかその日を乗り切るのが精一杯という状態で一日が終わります」
映画監督のウッディ・アレンはかつて、「人生の成功は、その場に顔を出せるかどうかで8割が決まる」と言った。しかし、この分野の研究が増えるにつれて、この皮肉な発言に登場する数字は、少なくとも職場について言えば、いくぶん楽観的であることがわかってきた。
研究者たちによれば、「プレゼンティーイズム」、すなわち出勤していても病気や体調が優れないせいで、頭や体が思うように働かない問題によって、生産性は3分の1以上も下がることがあるという。
実際、プレゼンティーイズムは、生産性の低下という面で対をなす「アブセンティーイズム」(予定外の欠勤)よりも、はるかに高くつく問題のようだ。またアブセンティーイズムとは違って、プレゼンティーイズムは必ずしも一目瞭然ではない。つまり、病欠はだれにでもそれとわかるが、病気や体調のせいで能力が発揮できない場合、いつ起こったのか、どれくらい深刻なのか、わからないことが多い。
「元気そうに装ってはいます」とファーラーは言う。彼女は何年にもわたってさまざまな処方薬や市販薬を試したものの、ほとんど効き目がなかった。「どう感じているかなど、人にはわかりませんからね」
しかし、インターナショナル・トラック・アンド・エンジンやバンク・ワン(2004年にJPモルガン・チェースによって買収された)、ロッキード・マーチン、コメリカ・バンクといった先進的な企業では、プレゼンティーイズムを問題と位置づけ、何らかの対策を講じている。
具体的には、仕事の足を引っ張る病気や症状がどれくらい蔓延しているのかを把握し、それによる生産性の損失を算定し、コスト効率の高い方法でその損失に対処することになる。
新しい研究分野であるために、いくつかの問題をめぐって疑問が残ってはいる。その一つは、さまざまな病気が正確にどの程度まで生産性を低下させるのか、という肝心な点である。