モバイルシフトの進展により、消費者の車選び、車の購入までのプロセスが大きく様変わりしている。こうした時代に自動車業界が直面するマーケティング上の課題とその解決策について、日産自動車 日本マーケティング本部の堤雅夫氏と、フェイスブック ジャパンの武村綾悟氏に聞いた。

スマホ接触時間の劇的な増加を受け
デジタル広告を積極的に増やす

――デジタルメディアやスマートフォン(スマホ)の普及により、消費者のコミュニケーション手段、情報獲得手段のモバイルシフトが加速しています。1日のメディア別接触時間を調べたある調査では、2009年に5.6%だったスマホへの接触時間が、19年には28.6%に跳ね上がっています。また、米国のデータによると、朝起きて最初に触れるのがスマホという人が44%もいるそうです。こうした中で、自動車業界が直面するマーケティング上の課題について、どのようにお考えですか。

 スマホの接触時間が2014年を境に劇的に増えました。自動車業界全体の傾向として、当時は各社ともテレビへの出稿がほとんどでしたが、当社では、早い段階から積極的にデジタル広告の投資を増やしてきました。

 一方、大手広告代理店の調査によると、実はモバイル、テレビなどさまざまなメディアを含めたメディア総接触時間は増えています。テレビを見ながらスマホを触るというマルチスクリーン化が進行しているのです。

堤雅夫
日産自動車
日本マーケティング本部 ブランド&メディア戦略部 部長
2004年P&G入社。「アイムス」「アリエール」「レノア」のブランドマーケティングを担当。2010年フィリップスジャパン入社、マーケティング部長。2013年すかいらーくに移り、マーケティング本部副本部長として、広告、販促、デジタル、PR領域を統括。2018年日産自動車に入社し、現職。

 テレビはリーチという意味で重要なメディアであることに変わりありません。ずっとテレビを見ているわけではないですが、かといってテレビをまったく見ていないというわけでもないのです。テレビとモバイルをどちらも活用しながら、ブランドコミュニケーションの量と質を高めていくという形が今後も続くでしょう。

武村 テレビはリーチの幅を広げることに長けたメディアです。ただ、広告を見たユーザーが来店予約をするといったような行動変容を促すには、質の高いリーチが必要です。例えばテレビとモバイルでリーチを最大化し、かつモバイルの特性を活かし、ターゲットに合わせてクリエイティブを最適化することで、深いコミュニケーションが可能になります。メディアの特性を活かして補完関係を築くことが効果的だと思います。