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気候変動や格差といったグローバルな課題を解決するには、政府のみならず、企業による行動が不可欠である。アクセンチュアと国連グローバル・コンパクトが3年に1度実施する調査では、企業経営者1000人以上を対象に、彼らの問題意識を探っている。『グリーン・トゥ・ゴールド』の著者アンドリュー・ウィンストン氏がその報告書を分析した結果、CEOたちの考え方に大きな進歩が見られる一方で、4つの懸念点も明らかになった。


 気候変動や格差といった世界的な課題を解決するには、ビジネスコミュニティが重大な役割を果たす必要がある。その課題をよく理解し、企業活動に深淵な変化を起こす意思を持つCEOも必要だ。

 今年の8月、米国大手企業のCEO約200人が、財界団体ビジネス・ラウンドテーブル(BR)を通じて、企業の目的は株主利益の最大化だけではないと宣言した。だが彼らに、その言葉を実行に移す覚悟はあるのだろうか。

 そんなCEOたちの姿勢に関する調査報告が、9月24日に発表された。アクセンチュアと国連グローバル・コンパクト(UNGC)が3年に1度実施している調査で、世界の企業経営者1000人以上にグローバルな課題に対する考えを聞くものだ。

 今年の報告書は、"The Decade to Deliver: A Call to Business Action"(実行の10年:企業の行動の呼びかけ)というタイトルで、とりわけ持続可能性への取り組みに焦点を当てている。この報告書を読むと、今後を楽観すべき理由と、悲観すべき理由の両方が示されている気がする。ただ、企業のステークホルダーをこれまでよりも幅広く捉えようというBRの呼びかけは、気まぐれではないようだ。

 CEOたちが、社会における自社の位置づけに心を砕いているのは明らかだ。ペルノ・リカールのアレックス・リカールCEOは、「消費者が10年後に、私たちにどうなっていてほしいと思っているか理解する必要がある。……利益だけを目標にしている企業は死ぬと思う」と語っている(本稿のCEOたちのコメントは、すべて報告書からの引用)。

 全体として、今年の報告書の根底には、「気候変動対策は時間切れになりつつある」という危機感が存在する。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、昨年の報告書で、最悪の事態を一部でも回避するためには、2030年までに温室効果ガスの排出量を現在の半分に減らす必要があると指摘した。

 これに対して、「私たちの対応スピードは遅すぎる」と、今回のアクセンチュア/UNGCの報告書は訴えている。主筆の一人であり、アクセンチュアでストラテジー・アンド・サステナビリティ本部マネジング・ディレクターを務めるジェシカ・ロングは、「今回の調査報告書の狙いは、行動を呼びかけることだ」と語る。「多くの努力がなされており、企業はコミットメントを増やしている。だが、現在の実施レベルと、口先だけでの約束では、2030年の目標達成は不可能だ」

 この報告書が挙げる3つの「行動の呼びかけ」は、少しばかり時間をかけて吟味する価値がある。これは、(1)各CEOが自分の会社の野心とインパクトのレベルを高めること、(2)より率直に課題を認めてコラボレーションの方法を変えること、(3)責任あるリーダーシップを定義すること、である。この第3のポイントは、CEOたちが人間として個人的にコミットすること、と言い換えることができる。

 筆者は、この課題について長年企業のコンサルティングをしてきた経験から、無意識のうちに、報告書の重要なインサイトとデータを「驚くべきではない/予期されたこと」「驚くべきこと」「有望なこと」「懸念されること」に分類していた。