顧客への裏切りはなぜ起きるのか
2009年、フィッシャープライスがロックン・プレイス・リーパー──移動可能な、かご型ベビーベッド──を発売した当時、同社と親会社のマテルは、下がり続ける株価を反転させるというプレッシャーにさらされていた。ロックン・プレイス・リーパーはヒットし、2019年までに470万台を売り上げた。商品発売後に米国で生まれた赤ちゃんの10人に1人以上が使った計算だ。
だが、いまになってみると、この成功には高い代償がついてきた。2009年以降、ロックン・プレイス・リーパーが関係する事故により、32人の乳児が死亡したのである。
フィッシャープライスは当初、保護者が乳児をストラップで適切にベッドに固定しなかったことが、死亡の原因だと主張した。しかし、規制当局が同商品と関連があると認定した最初の死亡事故から約4年が経過した、2019年4月5日、フィッシャープライスは米国消費者製品安全委員会と共同で、同商品を寝返りができる子どもに使わせてはならないとする警告を発表した。