不祥事はなぜ起きるのか
企業の不祥事や不正行為は後を絶たず、そのたびにコンプライアンスの強化やガバナンス整備の必要性が声高に叫ばれてきた。しかし、社会の信頼を裏切る事件が、相変わらずメディアを賑わせている。なぜなのだろうか。
たとえば、日産自動車のカルロス・ゴーン元CEOの事件。メディアはゴーン氏の横暴ぶりをあげつらうが、これを個人の問題として論じている限り、問題の核心に迫ることはできない。一人の経営者が日産とルノーのトップを兼ねる絶大な権力を持ち、その周囲を側近や気心の知れた人物で固めていれば、健全な監督・牽制機能は働かず、深刻な経営問題が発生するのは、ある意味で必然的なことといえる。
私自身、産業再生機構時代を含めて、これまで数多くの企業不祥事や組織的な腐敗に接してきた。その体験をもとに人間行動の本質を考えると、不祥事の原因を個人の善悪に求めるのは非建設的な議論である。