企業の謝罪は難しい

 2019年4月4日、ボーイングの会長兼CEOのデニス・マレンバーグは、不可能に近いタスクに対峙していた。ボーイング737MAX機の墜落事故2件について、謝罪しなければならないのだ。

 2018年10月と2019年3月に起きた同機の墜落事故では、合わせて346人の乗客・乗員が犠牲になっている。世論はすでにボーイングの責任を追及しており、マレンバーグは世間の信頼を取り戻さなくてはならない。2件の墜落事故において自社の責任を認めると同時に、問題は是正されるのだと、何とかして世間に確信してもらわなければならない。

 それは誰もが避けたいタスクであり、現実にも成功した事例ばかりではない。謝罪はえてして、形だけの言葉の羅列だととらえられる。言うべきことを儀礼的に並べて、言い逃れや責任転嫁しているだけだというのだ。中身のないおざなりな謝罪では、ステークホルダーとの関係を修復できないばかりか、事態がさらに悪化しかねない。