
理想の仕事に就き、個人的にも経済的にも豊かな人生を送るために、多くの人が経済的にも時間的にも大きな代償を払って大学へと進学する。だが、誰もが学位を持っている時代、大学に通う価値は本当にあるのだろうか。大卒資格の競争優位が失われたいま、希望の仕事に就けず妥協する学生は珍しくない。筆者は、現在の大学教育を全面的に変革すべき6つの理由を示す。
大学に進学する――。一見したところ、これはよい考えだ。
好きな科目を選び、その分野の専門家から学び、仕事に就いて未来を築く準備を整えて卒業する。だから経済的にも個人的にも莫大な犠牲を伴うことになっても、これほど多くの人(富裕国の約40%)が大学に進学しようと思うのだ。
だが、多くの人がやっているからといって、よいこととは限らない。たしかに、大学の学位を持たないことによる代償(雇用の見通しという意味で)はあるが、学位を持つことに明確な競争優位があるわけではない。人口の約半分が持っていることを考えると、なおさらだ。
現代のデジタルファーストの世界では、学習する方法、学習したことを捨てる方法、そして学習し直す方法(いずれもスピーディに)を、すべての世代に教える必要がある。そうしないと、人間が未来の仕事を変えるのではなく、人間が未来の仕事に変えられることになってしまう。
この記事を読んでいる以上、あなたは大学の学位を持っている可能性が高い。そしておそらく、大学時代について、とてもよい思い出があるに違いない。また、大学卒業後に労働市場に入ったときに直面するチャレンジや、新卒者に対して上司が見せるいらだち(適切な人材を見つけることや、新卒者とその期待を管理すること、そのスキルを伸ばすことなど)を、みずから経験したことがあるのではないか。
筆者2人が関わるマンパワー・グループでも、新卒者が「大学時代によい成績をもたらしたスキルではなく、仕事でよい成績を上げるのに必要なスキル」を学べるように多額の時間と資金を投じなければならないことを、クライアントの多くが嘆いている。一方、筆者の一人が米国コロンビア大学と英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで教えた学生のほとんどは、トップクラスの大学を卒業するにもかかわらず、魅力ある仕事を見つけるのに膨大な時間をかけていたし、そのくせ結局、何らかの妥協を強いられていた。
大学に代わる明らかな選択肢はまだ存在しないし、高等教育を全面的に改革する明確な道のりもない。しかし将来的には、現実的な代替策が登場する可能性は高いし、登場すべきだと私たちは考えている。その理由は主に6つある。