
営業職にはノルマが設けられ、未達ならば低評価を受けるし、それが続くと失職する可能性もある。さらに辛いことに、会社の業績が低迷すると、その矛先はまず営業部に向けられる。営業の仕事には重圧がつきものだが、過度のストレスはパフォーマンスを大きく低下させる。マネジャーはノルマを達成するために部下を追い込むのではなく、3つの取り組みを実践すべきだと筆者はいう。
営業職ならばノルマはつきものだという認識は、広く受け入れられている。ノルマを達成すれば上出来、できなければ無能。大幅な未達、または複数回にわたる未達ならば、失職――。これは個々の営業担当者にとっても、営業部全体にとってもストレスの素である。
ストレスが多く、客観的な達成指標が用いられている仕事は、他にもたくさんある。しかし、営業という職能には特有のストレスがある。会社の業績が落ちると、経営陣の矛先が営業部へと向くのだ。
昨年、ある世界規模の技術カンファレンスでのこと。筆者は聴衆のCEOらに、業績目標を下回ったときは何をするかと尋ねた。「営業部をせっついて、売上げを増やしてもらう」と、一人のCEOがすぐに答え、皆が笑いで応じた。それに続く発言と質問から、このやり方は70人のCEOからなる聴衆にとって、ごく当たり前であることが明らかになった。
契約を取ってくるのは営業部の仕事だ。とはいえ、リーダーが望む数字を達成しろと単に煽るだけでは、ストレスによる逆効果を招く環境が生まれかねない。
どんな仕事の場であれストレスが過度に高まれば、能力が十分に発揮されず、お粗末な意思決定につながる。集中力、問題解決力、詳細を正確に記憶する能力が著しく低下する。プレッシャーにあえいでいる人にこうした事態が生じている様子を、誰しも見たことがあるはずだ。
営業担当者は契約獲得への重圧にさらされると、強引すぎるやり方によって、有望な販売サイクルを傷つける(または台無しにする)可能性がある。強引さや必死な振る舞いは、営業の効果を下げ、利幅の縮小を招く。複雑なソリューションを扱う営業チームの場合、ほとんどの顧客は、押しつけがましいセールスには見向きもしないはずだ。
ストレスは、営業チーム全体に「商売のためなら何をしてもかまわない」という態度を蔓延させる原因となりうる。契約を取りやすくするために、割引が必要?もちろん問題なし。この見込み客は自社にふさわしくない?この取引には問題がありそう?気にするな、我々には今月達成すべきノルマがあるんだ――。つまり、どんな売上げでもいい、そのために何をしてもいい、という姿勢だ。
営業チームは、近視眼となり、短期志向になる。そうなるように導かれてきたのだから。