
グーグルと大手医療グループのアセンションが提携し、患者の臨床データを共有するという発表は話題を呼んだ。蓄積された膨大なデータをもとにより優れた医療が提供できると期待される一方で、患者の個人情報やプライバシーは守られるのかという批判の声も上がっている。我々が医療情報革命の恩恵を得るために、社会はいかなる障壁を乗り越えるべきなのか。
グーグルと大手医療グループのアセンションとの最近の提携合意は、デジタル革命がヘルスケアの世界を大きく変えていることを示す出来事だった。臨床医が、ある症状を持つ患者のケアにあたるとき、それまでにその症状で治療された人間の集合的経験が、リアルタイムに応用できる時代が到来しつつあるのだ。
しかし、その提携合意(アセンションが患者5000万人の臨床データをグーグルのクラウドに送り、グーグルはそのデータを処理してアセンションの患者管理と会計管理を改善する)に対する批判的な反応は、この規模の変革は、けっしてスムーズには進まないことを明らかにしている。
提携合意は、患者のプライバシー侵害と、サードパーティの利益のために個人情報が乱用されるかもしれないという懸念を生み出した。米国厚生省は早々に、このプロジェクトに関する調査を開始。複数の議員が、さらなる調査を要求している。デジタル時代における個人の医療情報をどのように管理するかをめぐり、長期にわたって重要な論争が始まろうとしているのだ。
患者はプライバシー権と、自分の医療情報を支配する権利を持つ。医師と病院は、疾病をうまく予防・治療するために、集合的な医療経験から学ぶことに関心がある。そしてテクノロジー起業家たちは、医療データの管理に付加価値をつけたら、投下資本に対するリターンを求める。
これから始まる論争は、医療情報技術が私たちのヘルスケアシステムに革命を起こすなかで、このようにしばしば相反する利益をどう管理するかをめぐるものになるだろう。
法的問題をしばし別にして、まず、アセンションとグーグルが提携した背景を整理しておこう。