組織のレジリエンスを高める効果(2) 企業文化
レジリエンス2.0は組織のレジリエンスの向上であり、それは従業員エンゲージメントにも好影響を及ぼす。そのヒントになるのがスターバックスの取り組みだという。学生が多く働く米国のスターバックスは、1週間に20時間以上働く学生に対して、同社が健康保険料や授業料を支払っている。
「米国の学生の多くは、高い健康保険料や授業料にストレスを感じています。それを企業が負担することで、従業員の生活上のストレスを取り除き、より仕事に注力できるように支援しているのです。その結果、組織のレジリエンスが高まり、変化に強いワークカルチャー(企業文化)の醸成につながっています」(フェルナンデス氏)。
勤務シフトもかなりフレキシブルで、さらには、各種教育プランも充実している。安心して働ける環境づくりに余念がない。この手の施策は学生に限らず、さまざまな社員に恩恵がある。会社として従業員のストレスをトータルに減じさせる施策を用意することで、働きやすい環境をつくり、レジリエンスの発揮を職場全体で高めているのだろう。
ほかにも、米国で成功を収めている企業は、組織のレジリエンスを高めるための施策を推進している。例えば、CAD(設計支援ツール)のトップ企業であるオートデスクは17時に帰ることを徹底し、長時間労働にならないようワークライフバランスを徹底している。
また、CRMの大手セールスフォース・ドットコムでは、18カ月ごとに自分が興味あるプロジェクトに自由に参加できたり、1年に56時間は業務時間としてボランティアに参加できたりするなど、仕事へのモチベーションを下げないよう工夫しているという。
「従業員に対して抑圧的な企業文化を改めることで、個々人のエモーショナル・インテリジェンス(EI:感情的知性)を高める。働きやすい文化、協力しやすい文化が醸成された結果、組織のレジリエンスが高まり、変化に俊敏に適応できる組織へと変容できる。それが、大きな変革や成功に導く原動力となるのです」(フェルナンデス氏)。