従業員のレジリエンス向上支援は、企業の責任である

 日本では、レジリエンスのような力は個々人で高めるべきだと考える人が多いかもしれないが、それは早計だ。世界の議論はその先に進んでいる。フェルナンデス氏はバーンアウトを例に挙げた。

「WHO(世界保健機構)は、職場で恒常的にストレスを抱えることで起きるバーンアウトをICD(国際疾病分類)に登録し、正式な病気として認めました」

 バーンアウトは複数の症状からなる。心身がひどく疲労している。組織へのエンゲージメントが低下し、組織に対して皮肉を言ったり、シニカルな見方をしたりすることが増える。仕事の効率低下などだ。

「最も重要な点は、バーンアウトを『組織によってきちんと管理されていない状態』だと定義していることです。つまり、従業員がバーンアウトになる原因は、従業員個人ではなく、職場や企業にあるのです」(フェルナンデス氏)。

 つまり、企業は従業員のレジリエンスを高めてバーンアウトにならないよう支援する、バーンアウトになる従業員を増やさない企業文化や制度を整える責任があるのだ。

 組織のレジリエンスを高めるポイントを、フェルナンデス氏は改めてこう締めくくった。

「レジリエンスと言えば、ストレスを感じる要因を理解し、ストレスをコントロールするのがまず重要だ。ただ、バウンスバックから大きく飛躍するには、ストレスコントロールだけでは足りない。大事なのはメンタルトレーニングをしてマインドフルネスを高めたり、コンパッションセルフ・アウェアネスなどのエモーショナル・インテリジェンス(EI)を磨いたりすることだ」

「企業としては、従業員がこれらの力を高められるよう支援する一方、これらを阻害するような企業文化や制度を改める必要がある」

 フェルナンデス氏いわく、「米国企業でもまだ、こうした取り組みを行っている企業はそれほど多くありません。ですが、このように先陣を切った企業の成果を目の当たりにすれば、今後、さらに広がりを見せていくことでしょう」。

 いまからでも十分に間に合うはずである。
(了)

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