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多くの企業がイノベーションを起こそうと躍起になっており、イノベーション・ラボを設置したり、ハッカソンを開催したりしている。こうした活動が単なる見世物で終わる企業と、実際のイノベーションにつなげている企業とでは、何が違うのだろうか。筆者らは調査に基づき、「模範的イノベーター」が実践する6つの特徴を導いた。


 大手企業では、イノベーション・ラボやテクノロジー発掘拠点を設置したり、スタートアップに投資するアクセラレーター事業を展開したりすることが一般的になってきた。ハッカソンやアイデアチャレンジを定期的に開催する企業も多い。

 こうした活動が、形ばかりの「見世物」で終わる企業もあれば、実際に改善(新しいプロダクトやサービスの開発、多様なビジネスモデルの実験、新しい顧客をもたらす新興企業への投資)につながる企業もある。

 その違いはどこからくるのか。

 筆者が共同設立したイノベーション・リーダーは2019年、KPMGと協力して、イノベーション活動の成否を分ける要因を探った。調査回答者215人の多くは、大手企業のイノベーション、研究開発、戦略グループの担当者だ。

 私たちは、このうち約10%が所属する企業を「模範的イノベーター」と呼ぶことにした。これらの企業は、会社全体の戦略と一致するイノベーション戦略を策定するなど、具体的なコミットメントや制度を確立していた。また、開発部門と営業部門の両方から幅広い人材を参加させ、成果を測定する指標を導入し、業績と企業文化の両面で「結果」を出していた。つまりこれらの企業は、一夜限りの見世物ではなく、大ヒットミュージカル『ハミルトン』並みのロングランを生み出していた。

 とはいえ、模範的イノベーターの担当者も、一般の企業の担当者と同じように、早く結果を出してほしいという会社のプレッシャーをひしひしと感じていた。ただ、10点満点で答えてもらったところ、模範的イノベーターの担当者は、自社が現実的なイノベーション戦略を策定し、そのサポートに十分なリソースを投じていると、より自信を持って答えた。

 その背景には、各社のイノベーション戦略に対する長期的な展望と実施状況がある。模範的イノベーターには、長期的な視点を持つリーダーがいることも多い。

 以下に、模範的イノベーターの特徴を紹介しよう。