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企業文化は、企業にとって最も重要な資産の一つである。あなたの会社では、不正や不祥事を引き起こしやすい文化が蔓延してはいないだろうか。そこまでいかなくとも、自社が掲げる価値観と実際の行動が一致していないケースは多い。本稿では、企業文化をリスクにさらす6つの兆候を明らかにし、それらのリスクを回避する5つのステップを示す。


 2019年を企業の不祥事の年と呼ぶのは言いすぎかもしれないが(2008年は最悪だった)、問題が多かったことは間違いない。実際、被雇用者の20%が自分が働く組織で過去1~2年に文化的な危機──職場の態度や行動の問題を示唆する重大な出来事──を経験したと語っている

 それだけではない。さらに多い30%の人が、自分の雇用主の振る舞いを考えたときに、今後2年以内に文化的な危機──セクシャルハラスメント、性差別、財務不正、顧客への欺瞞、安全の軽視、経営陣の好ましくない行為など──が起きるだろうと思っている。

 2019年秋にユナイテッド・マインドがKRCリサーチとともに行った調査では、自分が働く企業の行動と企業が掲げる価値観について、両者がかなり一致していると答えた人は、わずか28%だった。すべての人が、あらためて考えるべき数字だろう。

 文化は、企業の最も貴重な資産の一つとされることも多いが、実態がそぐわない企業にとっては重荷になりつつある。#MeToo(セクハラや性被害の告発運動)の支持者はいまも多く、捜査や規制当局の目がいっそう厳しくなって、ソーシャルメディアの活動も高まり、取締役会やCEOは文化について、以前とは異なる説明責任を要求されている。

 このような状況を受けて、私たちのクライアントの多くが自問している──自分たちの文化は、自分たちをどのようなリスクにさらしているのだろうか。そして彼らの半分以上が、文化の「強化と発展」を2020年の経営の優先課題にすると語っている。つまり、組織の文化に関する積極的なリスクマネジメント──私たちが「文化への警戒心」と呼ぶアプローチ──を受け入れているのだ。

 では、問題が起きてから文化を見直す受身的なアプローチから、文化に対する能動的な警戒のアプローチへと、組織はどのように変わればいいのだろうか。

 私たちはまず、大手PR会社ウェーバー・サンドウィックでグローバルに活躍する危機対策専門家に、「これまでに取り扱った文化的な危機は、どのような状況で起きたか?」「現場で何があったか?」などの質問をした。続いて資料の詳しい分析と、全米の従業員500人以上の企業でフルタイムで働く18歳以上1000人を対象に調査を行った。

 一連の調査の目的は、文化のリスクを示すと思われる要素を、できるだけ多く集めて検証し、リスクの予測につながる指標を決めることだ。組織の評価や調査につながる指標の中から、最も重要な要素を見極めたいと考えた。

 さらに、調査データを統計的手法で分析して、文化のリスクの主な原因となる要素を以下の6つに絞り込んだ(1~6はリスクの予測について影響の大きい順番)。自分が働く会社が1つ以上について慎重さに欠けると思うなら、文化のリスクが迫っているかもしれない。