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デジタルツールの進化は多くの恩恵をもたらしたが、いつでも検索サイトやSNSを開けるようになり、集中力する機会を奪われているという指摘がある。その一方、注意散漫が好奇心と創造性を高めるという研究もある。筆者は、気が散りやすい性格の悪影響だけに目を向けるのではなく、それを自分の「才能」だと捉える生き方を提案する。本稿では、注意散漫という個性を活かせる4つの職業を紹介する。


 デジタル時代のさまざまな利点は言うまでもないが、1つ大きな難点がある。至る所に気を散らせるものがあることだ。私たちはひっきりなしにグーグルで検索して、ワッツアップのメッセージが途切れることはなく、アマゾンで衝動買いをする。

 デジタルバブルの生活が脳に及ぼす長期的な影響を評価するのは、時期尚早だろう。しかし、最近の心理学の研究が示唆するように、ソーシャルメディアの利用の増加と、集中力や共感力や社交的スキルの欠如、そして自己中心主義人生に対する不満の高まりには関係があるようだ。さらに、オフラインにできないことが、社会に知的にも文化的にも有害な結果をもたらしかねないという過激な指摘も、以前より当たり前になっている。

 デジタルな注意散漫に焦点を当てた私たちがあらためて考察しているのが、仕事の生産性との関係である。生産性は現代の強迫観念の一つだ。グーグル・トレンドによれば、「生産性を高める方法」を検索する人はますます増えている。

 この分野に関する従来の研究は、ソーシャルメディアの利用を管理して制限する、組織的な方針が必要だと提唱してきた。ウェブサイトブロッカーの導入が生産性を向上させるという実証研究の報告もある。

 一方で、アプリやサイトへのアクセスを制限することは、生産性と仕事に対する満足度を損なう場合もある。仕事に関連するソーシャルメディアの利用が、チームの士気と生産性にプラスの影響を与えるという研究も複数ある。一つには、ソーシャルメディアは知識の共有と共同作業の効率を上げるからだ。

 おそらくそれ以上に重要なのは、すべてに当てはまるアプローチはないということだ。つまり、デジタルな要因でもアナログな要因でも、すべての人が同じように気が散るという前提は間違っているのだろう。

 実際、以前から科学的な研究が示唆しているように、気が散りやすい傾向には、脳に関連する個人差がある。心が「迷走する」マインドワンダリング(マインドフルネスの反対と言えるだろう)は、性格の一つと考えられている。

 たしかに、集中力があり、長時間、没頭できて、気が散る要因に負けない資質は、一般に称賛される。しかし、注意散漫が好奇心と創造性を高めることもある点は、注目に値するだろう。

 関係がなさそうに思える情報を排除しすぎないほうが、あなたの考えや創意が、より独創的になり、平凡でなくなるかもしれない。同じように、定型や退屈さ、繰り返しに耐えられない人は、斬新で型破りな経験を求め、考え方や視野を広げたいと思い、社会的、知的、経験的な好奇心を育てようとするだろう(あなたの好奇心を評価する簡単なテストはこちらを参照)。

 そう考えると、注意散漫が個性になりうる仕事やキャリアを選ぶことは、注意散漫の悪影響に対抗する有効な手段になるかもしれない。

 才能とは、個性を適切に発揮できるということだ。自分の本来の習慣や振る舞いの傾向と自然に調和する仕事が見つかれば、そうした習慣や振る舞いが「才能」になるだろう。つまり、持って生まれた傾向や性質が高く評価される環境を見つけることができれば、パフォーマンスを発揮できる可能性は大いに高くなる。

 これを踏まえて、マインドワンダリングと注意散漫が強みになりそうな仕事を4つ選んでみた。1つのタスクや問題に長時間、集中できない人、迅速に解決策を見つけようとする人、日々さまざまなことが起きたほうが経験の幅も広がると思う人は、これらの仕事が性に合うかもしれない。