(1)起業家
起業家ほど変化に富んだキャリアパスは、あまりないだろう。個人事業主という、最もシンプルで小規模なパターンも例外ではない。
アイデアを思いつき、それを実行するための資源を見つけ、主な利害関係者とやり取りをして、自分の事業を売り込んで拡大する。自分でビジネスをやろうと決めたら退屈している暇はないし、型通りのことを繰り返すこともない。
メタ分析研究によると、驚くまでもなく、起業家は「経験を積極的に受け入れる」レベルが高い傾向にあり、一般の管理職やリーダーよりも好奇心が強くて、変化や新しさに関心が高く、退屈を感じやすい。さらに、定型や予想可能なことへの耐性が低い。また、別の研究によると、起業家は完全雇用の専門職に比べて、より広範囲のスキルと経験を伸ばす傾向が高い。
(2)広報/メディア制作
頭を休めることが苦手な人、周囲とのつながりを減らしたくない人、1つのテーマに長時間集中できない人は、広報やメディア制作の仕事に関心があるかもしれない。
さまざまな業界や企業のクライアントをマネジメントして、いつどんなニュースが起きても対応できるように準備をし、多様なオーディエンスや幅広いメディアとコミュニケーションを取る必要がある。退屈する瞬間はめったにない。
広報の専門家は、大量の情報を消化して取りまとめ、雑音も可能な限り排除せず、気が散る対象をコンテンツやストーリーの素材に変える力を求められる。
同じように、メディア制作者も真のゼネラリストでなければならない。最初の構想やアイデアを次々と出し合うプロセスも、脚本やスケジュール調整、キャスティング、監督編集など、現場のさまざまな段階をマネジメントすることも、同じくらい得意であることが求められる。しかも、人間関係の騒音は容赦がない。常にあれこれと要求する多種多様な個性の持ち主を、束ねなければならないのだ。
(3)コンサルタント
単調さや型通りのことが嫌いなら、コンサルティングも理想的な選択肢の一つだ。
もちろん、コンサルタントと言ってもさまざまな分野があるものの、マインドワンダリングと、新しい経験を積極的に受け入れる性格と、注意散漫な視点は、基本的に大きな強みになる。コンサルタントの最大の武器は専門性だが、喜んで学ぼうと思う知識やスキルは、すでに知っていることより重要なのだ。
コンサルタントは特定の分野や視点に集中するより、ゼネラリストであるほうが成功しやすい。さらに、新しい仕事を担当するたびに、新しいことを学び、新しいクライアントのことを理解して、新しい専門知識を伸ばすという唯一無二の機会が訪れる。
(4)ジャーナリスト
きわめて活発なマインドの持ち主なら、ジャーナリストも選択肢に入るだろう。
ジャーナリストは、先に挙げた3つのキャリアの要素を組み合わせた力が求められる場合も少なくない。起業家のように自分を売り込み、ニュースや現実社会の出来事を積極的に受け入れてすぐに反応し、話題を次々と切り換えて常に新しい疑問を追究する。つまり、注意散漫を学習経験に変えて、すでに知っていることよりも、これから学べることに対して敏感になる必要がある。
米国の社会哲学者エリック・ホッファーは、次のように語っている。「激しい変化の時代には、学ぶ者が世界の後継者となる。学ぶことをやめた者は、もはや存在しない世界を渡り歩く術に長けているだけだ」
注意力を高めようと努力している限り、退屈でストレスを感じることはない。集中と注意散漫の典型的なパターンは、あなたの個性の一部であり、あなたという人間をつくっている。
仕事のパフォーマンスを高め、キャリアの可能性を最大限に活かすためには、生来の性格と自然に一致する役割を見極めたい。自分の情熱ではなく、個性を信じてみよう。
HBR.org原文:4 Careers for People Who Are Easily Distracted, December 19, 2019.
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