第1に、カレンダーにタイムボクシングすると、仕事の相対的な位置づけができる。

 たとえば、プロモーション映像を火曜日にライブ配信しなければならないとわかっていて、制作チームが必要な編集を加えるのに72時間を要するなら、そのタイムボックスを配置すべき時間帯がわかる。実際、カレンダーのどこに予定を入れるべきかが簡単にわかるはずだ。タイムボクシングを使えば、予定が一目でわかり、感覚的に理解しやすくなる。

 一所懸命に仕事をしてベストを尽くすことが、実際には求められていないこともある。そうではなく、適切なタイミングで、適切な行動を取ることのほうが、全員によりよい結果をもたらすことがあるからだ。

 第2に、タイムボクシングを実践すると、効率よくコミュニケーションを交わしたり、協働したりできるようになる。重要な仕事が全部(重要度にかかわらず、仕事全部ということもありえる)カレンダーに入っていれば、それは同僚にも可視化される。

 可視化によって、前述の通り、あなたが他の人たちのスケジュールに合わせて自分の仕事を計画するようになるばかりか、他の人たちもあなたの仕事のスケジュールに合うかどうかを確かめることができる。(各自がプライバシーオプションを使いつつ)カレンダーを共有することは、マイクロソフトやグーグルが先陣を切り、いまやビジネスの世界では当然のことになっている。

 第3に、カレンダーは自分がやったことを包括的に記録する。多忙な1週間を終えて、自分は何を成し遂げたのか、よくわからないことはないだろうか。しかし、カレンダーを見ればそれがわかる。

 勤務評価が近づいてきたとき――過去6ヵ月間で、最もうまくいったことと、最もうまくいかなかったことは何だったのか。それらの答えもカレンダーの中にある。あるいは、1時間で翌週の計画を立てようとしたときに、何をやるべきか確認したいとする。その答えもカレンダーの中にある。

 ただし、会社や仕事とは別に、個人のカレンダーをつくることを忘れてはいけない。さもないと、自分のカレンダーにプライベートの予定を入れられなくなってしまうからだ。

 第4に、自分が物事をコントロールしていると感じられる。これは、特に重要だ。コントロール、つまり決断権や自律性は、職場で幸福感を得る最大の原動力だからだ。周囲からひっきりなしに遮られると、幸福感を得られず生産性も下がる。タイムボクシングは、これに対する正当な防御手段である。

 何をいつやるのかを自分で決め、タイムボクシングされた時間帯は気が散るものすべてをブロックして、仕事を終わらせる。それを繰り返すのだ。自分で継続的にコントロールし、達成した仕事が目に見えると、大きな満足感を得て、それが習慣化する。これは生産性(主として外的)に限らず、意思に関すること(内的、本能的)であり、感情に関わる。

 第5に、生産性がかなり向上する。「パーキンソンの法則」が皮肉まじりに言っているが、仕事の量は完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する。実際には、法則とまでは言えないものの(法則というよりも皮肉を込めた観察だ)、ある程度は真実だと多くの人が思うだろう(特にミーティングについては当てはまると言えよう)。

 この観察で導き出された結論は、実際問題として、我々は必要以上の時間を仕事に費やすことが多いということである。仕事をするのに本当はどのくらい時間をかけるべきかではなく(客観的)、たまたまそのときに使える時間の影響を受ける(状況的)からだ。1つのタスクに適切かつ限りのある時間を配分し、それに従うという規律をもってタイムボクシングを使えば、我々はパーキンソンの法則から解放される。

 タイムマネジメントや生産性対策の利点を正確に数量化するのは難しいが、これは明らかに大きい。よくある例を挙げてみよう。タイムボックスによって1時間集中すれば終えられるタスクなのに、小刻みに作業することで、結局2時間かけてしまってはいないだろうか。もしその答えが「イエス」なら、あなたの生産性はいまの倍になる可能性がある。

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 カレンダーに組み込まれたタイムボクシングの利点は多種多様で、大きな効果がある。このやり方によって、我々の感じ方(コントロール)、個人としての達成度(個人の生産性)、自分が属するチームの達成度(協働の促進)を向上できる。

 これは現代を生きるプロフェショナルとして、開発しうるスキルあるいは習慣のうちで最も重要なことだ。このスキルや習慣を身につければ、別の何かを成し遂げるための時間を、より多く得られるようになるからである。

 また、この手法には費用がかからず、簡単に応用できる。自分に合ったタイムボクシングを実行するための時間を、ぜひタイムボックスしてほしい。


HBR.org原文:How Timeboxing Works and Why It Will Make You More Productive, December 12, 2018.

マーク・ザオ=サンダーズ(Marc Zao-Sanders)
フィルタード・ドットコム共同創業者兼CEO。同社はAIを活用したスキル開発と学習を通じて生産性を向上させる教育テクノロジー会社。リンクトインはhttp://linkedin.com/in/marczs


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