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ビジネスパーソンは毎日、朝から夜まで大量の「やることリスト」と戦っている。どの仕事から手をつけるべきなのか。最も簡単に片づくもの、あるいは期限が差し迫ったものから取り掛かっていないだろうか。それは人間の性であるとはいえ、緊急性は低いが重要性の高いタスクを先送りしているとストレスが溜まり、生産性が低下する。本稿では、この問題を解決するために「プロアクティブ・タイム」の導入を提案する。


 月曜日の午前9時、オフィスに到着。今週も長い「やることリスト」ができている。メールの返信、クライアントとの打ち合わせ、社内会議、クライアントニーズの調査、提案書の作成、プロジェクト計画の見直し、業界情報のチェック。リストは、まだまだ続く。

 こんなとき、どれを最初にやるべきなのだろうか。

 ほとんどの人は、つい最も簡単な仕事か、期限の迫った仕事から片付けようとする。仕事の重要度は気にしない。これは、学者が「単純緊急性効果」(mere urgency effect)と呼ぶ現象だ。

 2018年、この効果に関して実施された、5つの実験の結果がまとめられている。被験者は、緊急度と重要度の異なる複数のタスクの間で、トレードオフとなる選択を迫られた。緊急度の高いタスクは期限が早く、重要度の高いタスクは報酬額が高い。結果として、重要度の高いタスクよりも報酬の少ない緊急度の高いタスクが選ばれる傾向が見られた。人は、時間がないと思うと、より時間が気になるようだ。忙しいと感じると、さして重要でなくとも、緊急の用事を優先するのが人情なである。

 この傾向は、忙しければ忙しいほど強くなる。やるべきことがたくさんあるのに時間がないとき(専門家がいう時間貧困の状態)には、タスクの重要度を相対的に判断する余裕がなくなる。そのため経験則や、タスクの所要時間・期限といった環境からのキューに従って優先順位を決め、短時間で片付けられるタスクをこなしていくことで、少しでも多忙なスケジュールをコントロールできているかのように感じたいのだ。

 しかし、いつも急ぎの仕事を優先していると、急ぎではない重要な仕事(履歴書のアップデートやクリエイティブな作業など)は、どんどん後回しになる。なかには、いつまで経っても終わらない、などという仕事も出てくる。特に自分にとって大事な仕事ほどそうなりやすく、重要な仕事ができないでいるとストレスが溜まり、焦り、やりがいを失う。その結果、企業は生産性が低下する。

 従業員が今日やらなくてもよい仕事を明日に先送りするという、生まれ持った性向に打ち勝つためには、マネジャーとして何ができるのだろうか。

 私たちが実施した最新の調査によれば、単純な解決法がある。それは、緊急ではない重要な仕事に取り組むための時間を、あらかじめ確保させることである。これを私たちは、「プロアクティブ・タイム」、あるいは略して「プロタイム」と呼んでいる。