プロタイムを効果的に使うためには

 ある被験者は、こう話してくれた。「この6週間でわかったことは、マルチタスキングをやめて、1つの仕事をやり終えたら次の仕事というふうに進めたほうがよいということだ。それと1日2時間、携帯電話やメッセージ機能をオフにしたのもよかった。これは今後も絶対に続けたい。新しいやり方に慣れるまで1週間かかったが、その後は楽に実行できた」

 プロタイムが効果を発揮するには、メールやスラック、ショートメールといった、注意を逸らすような邪魔が入らないことが必要だ。メールをチェックして、1分で返せるようなクライアントからの至急の用件には応えたくもなるが、常にオンの状態でいると生産性を低下させることが、調査でわかっている。

 前のタスクのことを考えるのをやめて、次のタスクに全神経を向ける時間が必要である。そのため企業としては、状況が許す限り、従業員があらゆるじゃまをシャットアウトし、自分でプロタイムをスケジュールし、その時間枠で予定したタスクに集中できるように配慮しなければならない。

 また、従業員によっては、時間ごとに予定を立てたい人もいれば、(やることだけを決めて時間は成り行きに任せる)イベントベースの人もいる。プロタイムは、時間ごとに予定が組まれているほうが生産性もやる気も高まる、という従業員に最も向いているかもしれない。一方、イベントベースの従業員は、より自由度のある、まとまった時間をブロックして、タスクをやり遂げるほうが合っている可能性がある。たとえば、毎週月曜日の午前中や金曜日の午後を丸々ブロックするなどの方法だ。

 マネージャーとしては、以下のような点も検討すべきだろう。自分が従業員のプロタイムをブロックしてあげたほうが、スムーズにいくだろうか。プロタイムの効果を得るには、毎日設ける必要があるだろうか。2時間では多すぎる/少なすぎるだろうか。

 まずは簡単にヒアリングをして、従業員側の関心度を測ることから始めてもよいし、マリッツで行ったように実験的に導入して、従業員やクライアントへの影響を見るのもよいだろう。従業員が慣れて、どの日にどのタスクを予定すればよいかがわかるようになるまでの期間を考慮し、最低6週間は実施することをお勧めしたい。

 さまざまな環境や状況での効果、どのような人に最もメリットがあり、何がベストプラクティスと呼べるかに関しては、さらなる研究が必要である。ただ、とりあえずは、ご自身の重要だが緊急性のないタスクのためにプロタイムをお試しいただき、どうであったかの感想をお聞かせいただきたい。


HBR.org原文:Getting Your Team to Do More Than Meet Deadlines, November 15, 2019.

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シャーロット・ブランク(Charlotte Blank)
マリッツの最高行動責任者(Chief Behavioral Officer)。学術理論を実務に応用する橋渡し役。現代マーケットにおける動機づけや行動に関する理解を深めるために、高度な実地調査を行なっている。

ローラ M. ジョージ(Laura M. Giurge)
ロンドン・ビジネス・スクール博士研究員。オクスフォード大学ウェルビーイング・リサーチ・センターのバーンズ・リサーチ・フェロー。研究テーマは、時間、幸福、仕事の未来。

ローレル・ニューマン(Laurel Newman)
マリッツの行動科学者。元大学教授。調査の他、クライアントに並外れた価値を届けるために、行動科学を応用した従業員教育の開発を行う。

アシュレー・ウィランズ( Ashley Whillans)
ハーバード・ビジネス・スクール助教授。研究テーマは、時間、お金、幸福。