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新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、企業の危機管理体制が問われている。多くの組織が事前の備えに焦点を当てた対策を実施しているが、ハーバード・ビジネス・スクール学長のニティン・ノーリア氏は、それだけでは不十分だと指摘する。複雑に変化する状況への適応力を磨くことが、疾病の感染拡大のみならず、危機に対する予防接種になる。


 疾病の流行、および危機管理全般に関して、多くの組織は準備を中心に考えている。死に至る危険もある新型コロナウイルスの突発的な出現に対しても、組織としての準備は重要だ。近年では多くの企業が、疾病の世界的流行に対する詳細な緊急対応計画を策定すべく、リスク管理チームを立ち上げている。

 これは必要なことだが、十分ではない。危機が発展し続ける複雑で不透明な状況に対して最も堅牢な組織は、単に計画を用意しているだけでなく、継続的に検知し、対応する能力を備えている。ダーウィンが述べたように、変化に最もうまく適応する種こそ生き残るのである。

 下図で示す組織を考えてみよう。疾病の大流行のような継続的な危機を、よりうまく乗り切れるのはどちらだろうか。

 発展的で予測困難な脅威への対応に、より適しているのは明らかに組織2である。複雑性理論からも明らかなように、事前に詳細な計画を準備しておくよりも、少数の基本的な危機対応原則に従うほうが効果的だ。たとえば火災の場合、複雑な避難計画よりも、「出口に向かってゆっくり歩く」という一つのルールのほうが、より多くの人命を救うことが立証されている。