この2つのディナーを機に、私は働く人々の個人および職業人としてのアイデンティティの研究でキャリアを積み重ねてきた。最近では、キャリアと人生のさまざまな段階にいるデュアルキャリア・カップルについて、5年間の研究を行った(近著Couples That Work〔未訳〕でその研究結果を述べている)。
なぜあるカップルはうまくいき、またあるカップルは失敗し、そして多くのカップルが疲弊するのかを突き止めようとした。そしてわかったのは、どのデュアルキャリア・カップルの生活にも、私たちの2つのディナーのような瞬間があることだった。
パートナーが自分を理解し、力を与えてくれると感じる瞬間と、互いの間の権力闘争によって、一方または双方が、相手は自分のことなど忘れているんだ、自分なんて相手にとってちっぽけな存在になったんだと感じる瞬間である。うまくいっているカップルですら、相手に忘れられたと感じる瞬間は必ずある。ただ彼らは、相手が力をくれると感じられる瞬間に戻ろうと努力する。
Couples That Workというタイトルの"work"には、働くという意味と、うまくいくという意味の両方が込められている。デュアルキャリア・カップルはもちろん、おそらくすべてのカップルは、互いの力を認め、支え、バランスを取る努力を続けるときに、初めてうまくいくからだ。そのような関係のカップルは、自分の仕事と人生の夢のすべて、2人に共通していないものまで含めて、相手が理解し支えてくれるので、力が湧いてくるのを感じる。
たとえばパートナーが将来、仕事で、あるいは仕事以外の場面で何を成し遂げたいと思っているかに興味を持ち、それを知るために時間を割く。パートナーの夢をともに喜び、苦労をともに感じる。パートナーを支えるために何ができるかを一緒に考える。
このようにして相手の夢に関わることで、相手を力づけることができる。また相手にも同じようにあなたの夢に関わってもらうことで、あなたも力を与えられる。
前述の本の執筆中、しばらくして気づいたことがあった。私はジャンピエロに、本について尋ねたり励ましたりしてほしいと思っていたが、初期の段階での原稿を読んでもらいたいとは思っていなかった。最も力づけられるのは、書く内容に意見をさしはさまずに、執筆を励ましてくれるときだった。
そのことを会話を通して伝えていなければ、私は窮屈に感じたかもしれないし、彼は無視されているように感じたかもしれない。家庭や仕事に求めるものを互いに明確に伝えようとしなければ、カップルはそのような感情を味わうことになる。やがて互いの存在が、束縛のように思えてくる。