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メールやソーシャルメディアを活用したデジタルマーケティングが全盛を迎える一方、カタログの郵送量は増加しており、レスポンス率も大きく上昇している。そして、デジタル化に乗り遅れた世代だけでなく、ミレニアル世代も郵送のカタログに関心を示している。なぜ、この極めてアナログなマーケティングが再評価されているのか。筆者は小売業者のフィールド実験を通じて、その理由を探った。


 過去20年間で、メールマーケティングやソーシャルメディアマーケティングが成長し、消費者体験がデジタル化しているにもかかわらず、2015年以降、カタログの郵送量は着々と増えている。そればかりか、消費者に意外なほど歓迎されている。

 カタログのレスポンス率は、2004年から2018年までに170%も上昇した。この効果は、インターネットを利用しない、デジタル化に乗り遅れた人たちに限定されたものではない。むしろ、特にミレニアル世代と呼ばれる30~40代が、郵送のカタログに関心を示しているというエビデンスがある。

 カタログは返り咲いたのだろうか?

 一部のカテゴリーの小売業界は、そう考えているようだ。ノードストロム、パタゴニア、クレート・アンド・バレル、レストレーションハードウェアなど、少なからぬ数のブランドや小売業者、また休暇やクルーズ船の旅を扱うレジャー産業が、紙のカタログに大きな投資をしている。さらにウェイフェア、ボノボス、バーチボックス、そしてアマゾンのような、効率的でデジタル化された消費者体験の生みの親ともいえる純然たるオンライン小売業者までが、いまやカタログを印刷している。

 この昔ながらのアナログなマーケティングツール、メールマーケティングやソーシャルメディアマーケティングに取って代わられるはずだったツールに、何が起きているのだろうか。「カタログ効果」は定着したのだろうか。eコマース企業は、カタログからどのような恩恵を得られるだろうか。

 私たちは、リテールテクノロジーの最新動向、数十年にわたる消費者心理の研究、そして我々が実施した最近のフィールド実験を活用して、この疑問に答えることにした。