顧客が本当に望むものとは何か
キリンビールでは、新商品を出しては撤退を繰り返すという連敗続きのジャンルがあった。それが、「第三のビール」の中で、原料の一部に麦芽を使う「麦系」と呼ばれる領域だ。この麦系新ジャンルは、市場への定着ができず、実に12連敗を喫していた。
筆者が2017年にマーケティング部長に就任して、まずメンバーと一緒に行ったのが敗因の分析だった。チームで過去の資料を丹念に読み込むと、それぞれの商品が勝ち切れなかった理由が見えてきた。投資対効果のバランスや販売タイミングなど、細かなところを挙げればきりがない。だが、大きく2つの課題に気づいた。
1つ目が「本当に顧客を起点につくっていたのか」という点だ。開発プロセスを見ると、競合他社の製品との差別化を図ろうと、市場で空いているポジションを狙うものがあった。また、自社の技術を活かそうと起案されたものもあった。だが、いずれも顧客が求めるものではなかった。初めに顧客を見てから開発が始まった様子がうかがえなかった。