顧客ロイヤルティの獲得は
株主と経営陣の利益につながる
ピーター・ドラッカーは、企業の真の目的は顧客を創造、維持することだと論じた。たいていのマネジャーはこれを理解しているが、その理解に沿って行動する人はごくわずかである。収益のプレッシャーにたえずさらされているせいで、往々にして精神的に追い詰められており、品質面での妥協、サービスの割愛、わずらわしい手数料の設定などを行うか、顧客をないがしろにすることによって、手早く利益を生み出さざるをえないのだ。この近視眼的な姿勢は顧客ロイヤルティ、ひいては顧客が自社にもたらす価値の低減を招く。
これではまずい。顧客ロイヤルティの獲得は間違いなく株主と経営陣、両方の利益につながる。調査によればロイヤルティリーダー企業、すなわちNPS(ネット・プロモーター・スコア)や満足度ランキングで業界首位の座を3年以上にわたって占める企業は、同業他社との対比で増収ペースが約2.5倍、次の10年間の株主利益率が2~5倍に達する。
にもかかわらず、企業と投資家は依然として、顧客リレーションシップよりも四半期利益を重視しており、これは主として次の3つの理由による。第1に、上場企業を対象とした財務情報の開示規則および企業会計の実務では、顧客価値に関する報告はほとんど要求されない。第2に、たいていの企業は顧客価値のマネジメントに必要なケイパビリティを持たない。第3に、伝統的な組織体制においては顧客ニーズよりも各職能の重点課題が優先される。