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ジェンダー平等は徐々に進みつつあるものの、同一労働に対して賃金格差を設けている企業がいまだに存在する。この格差が解消されない理由の一つとして、従業員が互いの給料を知らないからだという指摘がある。本稿では「賃金透明化法」が施行されたカナダの調査を通じて、男女の賃金格差を縮小するうえで、法制化がいかなる役割を果たしたのかを論じる。


 技術、教育、労働者の権利の進歩にかかわらず、男女の労働者の間では、仕事の内容に差がない場合でさえ、いまだ実質的な賃金の違いが存続している。

 男女間の賃金格差が生じる理由にはさまざまな説があるが、格差が続いている理由の一つとして、従業員が互いの給与を知らないからだとする見方が、研究者や政策立案者の間でますます支持されている。実際、企業の多くは、賃金に関する従業員間の情報交換を明示的に禁止する「ペイ・シークレシー(pay secrecy)」方針を採用しているが、米国では厳密に言うと、これは1935年に制定された全国労働関係法の違反である。

 リリー・レッドベターが起こした有名な裁判は、賃金の透明化が、男女賃金格差の認識と排除の両方につながる可能性を強調している。

 グッドイヤーのスーパーバイザーとして働いていたレッドベッターは、社員の給与を暴露する匿名の手紙を受け取って初めて、同じスーパーバイザーの男性よりも給与が少ないことを知った。この情報がアメリカ合衆国最高裁判所裁判での賃金平等擁護活動のきっかけとなり、最終的にオバマ大統領が「リリー・レッドベター公正賃金法」に署名してこれを成立させ、従業員が賃金格差に関する訴訟を起こしやすくなった。

 我々は、ここカナダの公共部門で、賃金の透明化に関する法律がどのような影響をもたらしたかを知りたかった。

 1970年代、他の点では類似しているように見える公立大学の男女教員の賃金格差は、15%にも達していた。過去4半世紀にわたり、カナダは公共部門における一連の賃金透明化法を施行した。これは、規定の基準額(5万ドルから12万5000ドルの範囲)を超える年間給与額の情報開示を要求する内容である。

 法律が施行されてから、大学における賃金格差は縮小し、2017年には4%未満まで低下した。我々は、賃金透明化法がそのギャップを縮めるうえで、どのような役割を果たしたかを評価するための調査を最近完了した。