1939年、マディソン街の広告会社エグゼクティブだったジェームズ・ウェブ・ヤングは、創造のプロセスを指南する名著『アイデアのつくり方』を書いた。この中でウェブ・ヤングは、「アイデアとは、古い要素の新しい組み合わせにほかならない」ことを教えてくれる。

 彼に言わせれば、創造のスキルとは、よく知っているアイデアとアイデアの間に新しいつながりを見つける能力であり、「(新しい)関連性に気がつく能力」だ。

 その50年後、スティーブ・ジョブズが似たような見解を示した。「創造性とは、物事をつなげることにすぎない。クリエイティブな人に秘訣を聞くと、少しばかり申し訳なさそうな顔をする。なぜなら、彼らは創造したというより、つながりが見えたにすぎないからだ。しばらくして振り返ってみると、それは当然のことに感じられる。なぜなら彼らは、自分の経験を結びつけて、新しい物事にまとめ上げたからだ」

 ウェブ・ヤングは、クリエイティブ思考を持つための、驚くほどシンプルなテクニックを示した。

 まず、刺激を起こす材料を集める。自分の関心分野で、挑発的なものと、思考のきっかけになるものをひたすら集める。

 これは体系的なプロセスで、時間や労力を要し、すぐさま成果が実感できるものではないと、ウェブ・ヤングは警告する。筆者の場合、ずっと読もうと思ってブックマークをつけていたウェブページや記事を最後までじっくり読んだりして、ほかの人たちの思考にどっぷり浸かる。

 次は、前段階で集めた材料を消化するプロセスだ。ウェブ・ヤングは、索引カード(学生時代に試験勉強に使ったタイプのカードだ)に要素ごとにメモを書き込み、要素間のつながりを探ることを勧める。これはパズルを解くのに似たプロセスで、少しばかりイライラするかもしれない。

 ウェブ・ヤングは、カードをシャッフルして、つながりを探すことを勧める。筆者の場合、索引カードではなくポストイットを使い、それを大きめの紙の上に置いてつながりを探す。マインドマップを描くような要領だ。

 ウェブ・ヤングが提案する創造のプロセスの最終段階は、生産性第一の現代で最も嫌われること、すなわち「何もしない」ことだ。

 ソーキンのシャワーのように、ウェブ・ヤングは、それまで考えていたことをいったん忘れて、無意識の処理に任せることを勧める。「そのテーマ全体を一度忘れて、頭の中からその問題をできるだけ完全に追い出す」

 そのうえで、「自分の想像力や感情をかき立てることをやる」。散歩に行くのでも、音楽を聴くのでも、映画を見るのでもいい。もちろんシャワーを浴びてもいい。少しばかりイライラする準備作業をしておくと、この段階で、「どこからともなくアイデアが浮かんでくる」と、ウェブ・ヤングは言う。

 ああ、わかる、わかる、と思う人は多いだろう。たしかに最高のアイデアは、まったく違うことをしているときに浮かぶことが多いようだ。

 近年でも、休暇中に素晴らしいインスピレーションが湧いたというエピソードは多い。大ヒットミュージカル『ハミルトン』の脚本・作曲・作詞・主演を務めたリン・マヌエル・ミランダは、メキシコのビーチでこの舞台のアイデアを思いついたと言う。インスタグラムの共同創業者であるケビン・シストロムも、メキシコのビーチを散歩中に写真投稿アプリをひらめいたと言っている。

 こうした現象は、クリエイティブな認知機能は、ディープで生産的な集中力ではなく、もっと散漫なものによって引き起こされる証拠だ。