
新型コロナウイルス感染症が拡大する中、疲労や不安、恐怖心を抱えている人は多いだろう。ネガティブな感情は精神的にも肉体的にも大きな負担となり、有害だ。終わりの見えない危機に直面するいま、どうすればレジリエンスを高めて、自分自身を守ることができるのか。
筆者らは先週、米国国内の医療機関の最高医療責任者約20人にプレゼンテーションを行った。冒頭、出席者にいまの気分を1文か2文で教えてほしいとお願いしたところ、堰を切ったように30分間、以下のような回答が噴出した。
「疲れ果て、追い詰められ、不安」
「恐怖心、疲労を感じる」
「いら立ちと落胆」
「この仕事量のまま続けることは不可能」
我々はいま、2種類の感染と闘っている。ウイルス自体と、それが生み出す感情の伝染である。
ネガティブな感情は、ウイルスに負けず劣らず伝染性があり、有害である。疲労、不安、パニックは、明晰かつ創造的に物事を考える能力、人間関係を効果的に管理する能力、優先事項に集中する能力、そして情報に基づいた賢い選択を行う能力を低下させる。
最初に起きるのは、生理学的な影響だ。心身や感情の慢性的あるいは極端な摩耗や損傷のコストを「アロスタティック負荷」という。内的資源に対する要求が限界を超えたときには、アロスタティック過負荷が生じる。
人の限りある資源には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機によって引き起こされた不安や不確実性により、極度の圧力がかかっている。その結果、判断力の低下、衰弱、バーンアウト(燃え尽き症候群)などが起きる。
それでは、どうすればレジリエンスを高め、自分を守ることができるのだろうか。その一つは、脅威や危険に直面したとき、自分の行動が「どの自分」に影響されているかを知ることだ。